本当に学校生活が終わってしまう。

 僕は、卒業の歌を歌うため、雛壇(ひなだん)の上に登ったとき、そう思った。

 アルミが上靴を擦って嫌な金属音をたてる。

 だが、そんなのが気にならないくらい、僕の心は感傷に浸っていた。

 早く終わってくれと一時は思っていた中学校生活は、自分が思っているほど、苦痛じゃなかった。

 もし、一年生の頃、中学校デビューを考えていなければ、どうなっていたのだろうか。

 もっと、ちゃんと同級生と関わることが出来ていたかもしれないし、本当に好きな人が彼女になってくれたかもしれない。

 色々な分岐点があって、その度に僕は失敗を選んでしまった。

 だけど、それに後悔はしていない。

 だって、こんなにも、素晴らしい後輩に出会えたから。

 ピアノから奏でられる柔らかな音が、式場に響き渡る。

 イントロが終わり、僕らは、口を開いた。

 男子から奏でられる低音の祈り。

 きっと、卒業は、新しい自分へのエールなのだろう。

 誰かと出会い、友情を育み、笑いあって、たまに意見が食い違ってケンカをする。

 綺麗事のように思われるけど、人はそのサイクルがあって、成長する。

 もっと、澄春(すばる)と遊びたかった。

 波葵(なみき)にもっと、恋人らしいことをしてあげたかった。

 秋枝(あきえだ)さんと、友達になりたかった。

 今になって、後悔のようなものが心のなかで渦を巻く。

 どうして、人と関わらなくなったのだろうか。

 どうして、過去に囚われ続けたのだろうか。

 誰かと関わって、デメリットなんてないのに。

 もう、二度とは戻らない中学校生活。

 後悔のようなものが心にあるせいで、涙がでてくる。

 泣きたくない。

 澄春、卒業しても僕を遊びに誘ってほしい。

 秋枝さん、もし、高校が同じなら、僕と友達になってほしい。

 ……波葵、もう一度、君と恋人になりたい。

 今度こそ、君と恋人らしいことをしたいから。