中学卒業から、もう、二年が経った。

 時間の経過は異常なほど早く、今はもう、高校生活二度目の春を告げるように満開の桜が咲き乱れている。

 今、僕はある人物を駅前で待っている。

 駅前にあるバス停のベンチに座って、スマホをいじり、後輩とのメッセージのやり取りを見ていた。

【SUBARU:明日、飯(おご)ってくださいよー!】

 そんなメッセージに僕は、クスクスと微笑んでしまう。

 腕時計を見て、そろそろ来る時間かなと思っていると、僕の名前が呼ばれた。

「ごめーん! 柚宇(ゆう)! 遅くなった!」

「おはよう。起こさなかったら危なかったんじゃない? 楓花(ふうか)

 全速力で走ってきたからか、彼女は、肩で息をしながら、僕の横に並んだ。

 卒業式の頃と変わらない(えり)元まで切ったボーイッシュな髪はボサボサになっている。

「まだ電車でてない?」

 楓花は、地下鉄への階段を一段飛ばしでジャンプしながら、聞いた。

「うん。余裕」

「そっか。ありがと。これも柚宇のおかげだね」

「去年もこんな感じだったね」

「あー、確かに。あの頃はまだ高校生活のリズムに体が慣れてなかったからねー」

 彼女とは、高校生になってから仲良くなった。

 楓花のことを秋枝(あきえだ)さんと呼んでいた頃、彼女は度々遅刻をしていた。

 指導の対象になり、このままの生活を続けていては、留年の危機が迫っているという時、僕に彼女は泣きついてきた。

 僕は、かつて澄春(すばる)にやっていたように楓花をメールや電話で起こし、時には家まで行って起こした。

 それで、彼女と仲良くなり、親友として僕らはこうしているのだ。

「……ていや!」

 僕は楓花との関係性の経緯を思い返していると、軽く頭にチョップをかまされた。

「なに?」

「なに考えてたの?」

 澄春も言っていた考えている時の(くせ)とかいうやつだろう。

 僕は、考えすぎると黙る癖があるらしく、それを楓花は気が付いていたらしい。

「いや、楓花と友達になれてよかったなって思って」

 別に嘘じゃない。

 楓花と友達にならなければ、僕は人の輪に入ることをしていなかっただろう。

「へぇ、嬉しいこと言うじゃん。このこの!」

 楓花は照れているのか、(ひじ)で僕の脇腹をつつく。

 地味に痛いから止めてほしい。

「そういや、今日空いてる?」

 電車の座席に座った時、彼女は僕にそう(たず)ねた。

「空いてるよ。マクドでしょ?」

「よく分かったね。後輩くんたち来るでしょ? 歓迎会ってことでどう?」

 彼女が複数人で言っているということは、この学校に知り合いが入学するのは、澄春だけじゃないということだ。

 元カノである波葵(なみき)も入学する。

 彼女とは卒業式の日もそうだが、気まずく別れたため、正直、会いずらい。

「いいと思うよ。ちなみに、楓花のおごりで」

「ひどっ! 柚宇も払ってよ!」

 こんな軽口を叩けるほど、僕は会話力は向上した。

 本当にありがたい。

 僕は楓花に一生感謝するだろう。