「ん……」

 相変わらず、(こじ)らせすぎる。

 寝ぼけているのにも関わらず、そんな自分に苦笑してしまう。

 また、柚宇(ゆう)君と出会ったときの夢を見ていた。

 二年前のある日、私は体調不良で塾内で倒れてしまった。

 そのときに助けてくれたのが、柚宇君だった。

 意識がぼんやりとしていたから、あまり覚えていないけど、そのときの柚宇君の顔がかっこよくて私はすぐに好きになった。

 相変わらず、単純でチョロすぎるけど、当時小学校六年生だった私に初恋が芽生えた瞬間だったのだ。

 若気(わかげ)(いた)りとして許してほしい。

 まぁ、そんな過去はもう夢の中。

 今日は、卒業式。

 柚宇君が、卒業してしまう。

 私は最後にこの気持ちを全部伝えることを決めてある。

 好意も、敬意も、失意も。

 全部あなたにしか渡せない想いだから。