ジリリリリリン!
目覚まし時計がけたたましく鳴って、「朝が来たぞ! 起きろ!」と言わんばかりに重い瞼を強制的に持ち上げる。
「んー……。うるさいなぁ……」
消え入りそうな声で呻くも、誰も答えない。
まぁ、目覚まし時計だから当然だ。
乱暴に目覚まし時計を叩いて、さっきまで見ていた出来事が夢なのだと気がつく。
卒業式の夢だった。
クラスメイトや同級生が皆泣いている中、自分は涙ひとつ出ずに、棒立ちして見ることしかが出来ない──そんな夢を見ていた。
「さっむ……」
急に布団から飛び出したからか、三月とはいえまだまだ寒いすきま風が身体中を襲う。
しかし、卒業式が今日あることは夢じゃない。
僕はそう思いながら、自室からでた。
「おはよー……。母さん……」
「おはよーさん、卒業式当日の気分はどう?」
「……くそダルいよ」
「あっはっは! アタシと同じこと言ってやがる! 高校はくそダルいを無くせたらいいな!」
朝から豪快に笑い飛ばした母さんは、本当に元気だ。
僕は、朝からそんなに笑えない。
元ヤンだった性格からこんな笑顔がきているかもしれない。
「そういや、後輩たちも来るだろ?」
母さんの何気ない言葉に胸が痛くなる。
いや、複数人にしてくれているだけで、マシと思うべきだろうか。
「……そうだね」
僕には、塾で知り合い、仲がよい後輩が二人いる。
一人は、よかった、過去形だが。
「あんまり、辛辣な顔するな。卒業の日くらい笑顔で行ってこい。最近、お前の辛そうな顔しか見ていないから」
「受験で疲れたからじゃない?」
「それなら、知るかボケ」
突如口が悪くなるのは、さすがは元ヤンだ。
「とりあえず、ぱっぱと顔洗ってこい。その憂鬱な気分を流してこい。そして、メシ食って早く学校行け」
元ヤン母さんの気遣いが溢れた言葉。
こういう所に僕は尊敬している。
僕は、洗面所に向かって、顔を洗う。
鏡に映った自分は、思春期ニキビが点在し、受験勉強の疲れや寝起きもあってか、全体的に暗い顔になっている。
洗顔クリームを使って顔を洗い、それから、母さんが作ってくれた朝食を食べた。
いつも通り、白いご飯に、豆腐のみそ汁、そして目玉焼きという定番でありがちな朝ご飯だが、これが本当に美味しい。
「ごちそうさまでした」
ご飯を食べ終えて、シンクで食器を軽く濯いだあと、洗う。
これが、作り手への感謝の気持ちだと僕は思っている。
そして、再び洗面所に向かい、歯を磨いて、髪を整える。
ここまでは、いつも通りの何気ない日常。
しかし、これは、中学生最後の朝。
高校生になれば、もう少し朝早くから起きなければいけないから、今まで通り、とはいかないだろう。
そんなことを考えながら、髪を整えていると、先ほどより、幾分かは、過去の後悔を思い出すことはなくなった。
それから、僕は、自室に戻り、布団を畳んでから、窓を開ける。
日が経つにつれ、暖かくなってきた風を感じて深呼吸をする。
目を瞑りながら、桜の蕾の独特な甘い匂いを感じ、今日も頑張ろうと思える。
これが僕の日課で周囲の匂いを感じとるというもの。
それをしたことによって、少し匂いに敏感になった気がする。
ハンガーに掛けてある制服を取り、着替える。
もう、この制服を着れるのは、今日が最後だ。
そう思うと、少し複雑な気分になる。
三年間、色々な自分と一緒に居たのが、この制服だから。
目覚まし時計がけたたましく鳴って、「朝が来たぞ! 起きろ!」と言わんばかりに重い瞼を強制的に持ち上げる。
「んー……。うるさいなぁ……」
消え入りそうな声で呻くも、誰も答えない。
まぁ、目覚まし時計だから当然だ。
乱暴に目覚まし時計を叩いて、さっきまで見ていた出来事が夢なのだと気がつく。
卒業式の夢だった。
クラスメイトや同級生が皆泣いている中、自分は涙ひとつ出ずに、棒立ちして見ることしかが出来ない──そんな夢を見ていた。
「さっむ……」
急に布団から飛び出したからか、三月とはいえまだまだ寒いすきま風が身体中を襲う。
しかし、卒業式が今日あることは夢じゃない。
僕はそう思いながら、自室からでた。
「おはよー……。母さん……」
「おはよーさん、卒業式当日の気分はどう?」
「……くそダルいよ」
「あっはっは! アタシと同じこと言ってやがる! 高校はくそダルいを無くせたらいいな!」
朝から豪快に笑い飛ばした母さんは、本当に元気だ。
僕は、朝からそんなに笑えない。
元ヤンだった性格からこんな笑顔がきているかもしれない。
「そういや、後輩たちも来るだろ?」
母さんの何気ない言葉に胸が痛くなる。
いや、複数人にしてくれているだけで、マシと思うべきだろうか。
「……そうだね」
僕には、塾で知り合い、仲がよい後輩が二人いる。
一人は、よかった、過去形だが。
「あんまり、辛辣な顔するな。卒業の日くらい笑顔で行ってこい。最近、お前の辛そうな顔しか見ていないから」
「受験で疲れたからじゃない?」
「それなら、知るかボケ」
突如口が悪くなるのは、さすがは元ヤンだ。
「とりあえず、ぱっぱと顔洗ってこい。その憂鬱な気分を流してこい。そして、メシ食って早く学校行け」
元ヤン母さんの気遣いが溢れた言葉。
こういう所に僕は尊敬している。
僕は、洗面所に向かって、顔を洗う。
鏡に映った自分は、思春期ニキビが点在し、受験勉強の疲れや寝起きもあってか、全体的に暗い顔になっている。
洗顔クリームを使って顔を洗い、それから、母さんが作ってくれた朝食を食べた。
いつも通り、白いご飯に、豆腐のみそ汁、そして目玉焼きという定番でありがちな朝ご飯だが、これが本当に美味しい。
「ごちそうさまでした」
ご飯を食べ終えて、シンクで食器を軽く濯いだあと、洗う。
これが、作り手への感謝の気持ちだと僕は思っている。
そして、再び洗面所に向かい、歯を磨いて、髪を整える。
ここまでは、いつも通りの何気ない日常。
しかし、これは、中学生最後の朝。
高校生になれば、もう少し朝早くから起きなければいけないから、今まで通り、とはいかないだろう。
そんなことを考えながら、髪を整えていると、先ほどより、幾分かは、過去の後悔を思い出すことはなくなった。
それから、僕は、自室に戻り、布団を畳んでから、窓を開ける。
日が経つにつれ、暖かくなってきた風を感じて深呼吸をする。
目を瞑りながら、桜の蕾の独特な甘い匂いを感じ、今日も頑張ろうと思える。
これが僕の日課で周囲の匂いを感じとるというもの。
それをしたことによって、少し匂いに敏感になった気がする。
ハンガーに掛けてある制服を取り、着替える。
もう、この制服を着れるのは、今日が最後だ。
そう思うと、少し複雑な気分になる。
三年間、色々な自分と一緒に居たのが、この制服だから。