──大丈夫ですか? しっかりしてください!

 誰かの呼ぶ声がする。

 ずっと塾でも聞いていて、桜川(さくらがわ)君と談笑している低い優しい声。

 その声の主の顔が見たいのに、視界がぼやけていて、私は見れない。

 体が宙に浮いて、私は空を飛んでいる気分になった。

 ぼやけた視界が少しだけ鮮明(せんめい)になって、私のずっと好きな人──柚宇(ゆう)君の顔を目視した。

 彼は、不安そうな顔でこちらを覗き込んでいる。

 ──大丈夫、です。

 震える口でなんとかそう言うと、柚宇君は、更に(あわ)てた顔をして、私を抱きかかえた。

 ──大丈夫だから。

 私は、柚宇君のその言葉を聞いたが最後、意識が闇のなかに落ちていった。

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