それから、卒業式が始まり、滞りなく進んでいた。
ユウ君、もうちょっと声張って返事出来なかったのかな。
卒業賞状授与のとき、ユウ君の声が結構小さかった。
このあと、すぐに送辞がある。
俺は、波葵が送辞に立候補したため、彼女との時間を作りたいがために、立候補した。
せっかくのチャンス、逃してたまるかと意気込みを持ちながら、練習を重ねて、とうとう本番がやってきた。
練習中、適切なアドバイスを受けれるのが嬉しかった。
そして、もっと好きになったのはいうまでもない。
そして、送辞を言う瞬間となり、俺と波葵は演台にあがった。
『厳しい冬の寒さの中にも、春の訪れを感じることの出来る季節となりました。本日、晴れてこの季理町中学校卒業式を迎えられた第百一期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。在校生を代表し、心よりお祝い申し上げます』
初めの言葉をスラスラと言い、色々と話してから俺は、波葵と代わる。
彼女の長い黒髪がすれ違い様に揺れ、優しい香りが鼻をくすぐる。
彼女は、マイクに向かって、優しい声で語るように言う。
それは、聞いているだけで胸がときめきそうになり、優しい痛みが俺の恋心を焦がす。
そして、最後に、
『先輩の皆様、私たちは先輩方の後輩としてこの学び舎でともに生活できたことを心から誇りに思います。これまで本当にありがとうございました。先輩方のご健康とご活躍を祈念して、在校生代表の送辞とさせていただきます』
そう言って、送辞が終わった。