──ピンポーン!
部屋のインターホンが鳴った時、俺はまだ寝ぼけていた。
「ふぁぁ……。ユウ君、早すぎでしょ……」
インターホンが鳴ってくれたおかげで意識は覚醒したものの、家に来るのがかなり早い先輩にもう少し遅く来てくれないかなと心のなかで毒づく。
俺は、朝ご飯は食べずに顔だけ洗って、制服を着替えて、マンションの一室からでる。
そこにいたのは、ユウ君こと冬山柚宇先輩。
ひとつ上で同じ塾に通っている人だ。
爽やかに切った短髪に、優しげな瞳。
顔のパーツが全体的に優しく整っており、テレビの人気俳優に匹敵するほどなのに、俺が知る限り二年連続、バレンタインチョコを貰った個数はゼロという残念なイケメンさんだ。
性格も優しいからモテてもなにも問題ないはずなんだけどなぁ。
「えへへー! ユウ君先輩おはようございます!」
俺は、呼び方を変えて挨拶をする。
この人は、タメ語で話すと暗殺者もビックリの鋭い目付きで睨んでくる。
「ユウ君先輩て」
俺は思った通りの反応に笑うしかない。
「だって、ユウ君、タメ語と君付けで話したらやめろよオーラだしてくるじゃないすか? だから、先輩って言ったらいいかな~なんてー!」
俺は、それっぽい感じを演出しながら、暴論を言う。
「僕、そんなオーラだしてるの?」
いや、無自覚だったんかい。
「だしてますよー! そんなのだから、次の彼女出来ないんですよー?」
俺は、言った瞬間、やべっと思った。
この場の空気がちょっとだけ冷えた気がした。
この発言は、俺と先輩のたぶん次はない大ゲンカの元となった出来事を示しているから。
先輩の元恋人は、俺のずっと好きだった人。
その人を傷つけたから、俺はこの人に本気でキレた。
ユウ君は、考え込むといつも俯いてしまう。
この人の悪い癖だ。
「ユウ君!」
メンタルが脆いくせに自分が関わったことに責任を持とうとする。
本当に不器用だこの人は。
「今日くらい、考えるのは止めましょうよ! いつもご苦労さんです!」
心からの感謝も込めて、俺は考えさせるのをやめさせた。
最後の見せ場なんだ。
この時くらい、笑っていてくださいよ。
「……とりあえず、行こっか」
ユウ君は、そう言って、歩き出そうとする。
俺は、ある物を買っていたことを思い出す。
たしか、鞄に入っていたはず。
あった、これだ。
「そうですね! あ、ユウ君。これ、お祝いの品です!」
俺が祝いの品として渡したのは、金色のシャーペンだった。
この人は、塾でもあきらか百均と分かるシャーペンや消しゴムを使っているため、それでよくいじりのネタにされていたのをたまたま文房具屋に行ったときに思い出したのだ。
それで、卒業兼受験合格祝いとして、このシャーペンを買った。
「ユウ君、いつもボロいシャーペン使っているじゃないすか。百均のやつ。高校でもそんなの使っていたらバカにされると思うんで、俺からのプレゼントです!」
高校からは、そういう些細なことでいじめに発展すると聞いたことがあるから、これで大丈夫だろう。
「ありがとう……」
ユウ君は、笑顔でシャーペンを眺めていた。
口角が上がっていて、かなり喜んでいるようだ。
買っててよかった。
ユウ君は、そう思わせるような顔していた。
そんなユウ君に俺は少しいじわるをする。
「今度こそ、行きましょー!」
先に進んでやった。
ユウ君は、待ってもなにも言わずに、追いかけるように俺の後ろを歩いていた。
この人、マイペースだなぁ。大丈夫か?
マイペースすぎて、ちょっと、心配もした。
部屋のインターホンが鳴った時、俺はまだ寝ぼけていた。
「ふぁぁ……。ユウ君、早すぎでしょ……」
インターホンが鳴ってくれたおかげで意識は覚醒したものの、家に来るのがかなり早い先輩にもう少し遅く来てくれないかなと心のなかで毒づく。
俺は、朝ご飯は食べずに顔だけ洗って、制服を着替えて、マンションの一室からでる。
そこにいたのは、ユウ君こと冬山柚宇先輩。
ひとつ上で同じ塾に通っている人だ。
爽やかに切った短髪に、優しげな瞳。
顔のパーツが全体的に優しく整っており、テレビの人気俳優に匹敵するほどなのに、俺が知る限り二年連続、バレンタインチョコを貰った個数はゼロという残念なイケメンさんだ。
性格も優しいからモテてもなにも問題ないはずなんだけどなぁ。
「えへへー! ユウ君先輩おはようございます!」
俺は、呼び方を変えて挨拶をする。
この人は、タメ語で話すと暗殺者もビックリの鋭い目付きで睨んでくる。
「ユウ君先輩て」
俺は思った通りの反応に笑うしかない。
「だって、ユウ君、タメ語と君付けで話したらやめろよオーラだしてくるじゃないすか? だから、先輩って言ったらいいかな~なんてー!」
俺は、それっぽい感じを演出しながら、暴論を言う。
「僕、そんなオーラだしてるの?」
いや、無自覚だったんかい。
「だしてますよー! そんなのだから、次の彼女出来ないんですよー?」
俺は、言った瞬間、やべっと思った。
この場の空気がちょっとだけ冷えた気がした。
この発言は、俺と先輩のたぶん次はない大ゲンカの元となった出来事を示しているから。
先輩の元恋人は、俺のずっと好きだった人。
その人を傷つけたから、俺はこの人に本気でキレた。
ユウ君は、考え込むといつも俯いてしまう。
この人の悪い癖だ。
「ユウ君!」
メンタルが脆いくせに自分が関わったことに責任を持とうとする。
本当に不器用だこの人は。
「今日くらい、考えるのは止めましょうよ! いつもご苦労さんです!」
心からの感謝も込めて、俺は考えさせるのをやめさせた。
最後の見せ場なんだ。
この時くらい、笑っていてくださいよ。
「……とりあえず、行こっか」
ユウ君は、そう言って、歩き出そうとする。
俺は、ある物を買っていたことを思い出す。
たしか、鞄に入っていたはず。
あった、これだ。
「そうですね! あ、ユウ君。これ、お祝いの品です!」
俺が祝いの品として渡したのは、金色のシャーペンだった。
この人は、塾でもあきらか百均と分かるシャーペンや消しゴムを使っているため、それでよくいじりのネタにされていたのをたまたま文房具屋に行ったときに思い出したのだ。
それで、卒業兼受験合格祝いとして、このシャーペンを買った。
「ユウ君、いつもボロいシャーペン使っているじゃないすか。百均のやつ。高校でもそんなの使っていたらバカにされると思うんで、俺からのプレゼントです!」
高校からは、そういう些細なことでいじめに発展すると聞いたことがあるから、これで大丈夫だろう。
「ありがとう……」
ユウ君は、笑顔でシャーペンを眺めていた。
口角が上がっていて、かなり喜んでいるようだ。
買っててよかった。
ユウ君は、そう思わせるような顔していた。
そんなユウ君に俺は少しいじわるをする。
「今度こそ、行きましょー!」
先に進んでやった。
ユウ君は、待ってもなにも言わずに、追いかけるように俺の後ろを歩いていた。
この人、マイペースだなぁ。大丈夫か?
マイペースすぎて、ちょっと、心配もした。