「スミ、いつまで寝てるの。遅刻するわよ」

「……今日は休む」

「あんたそう言って昨日も一昨日も行かなかったでしょ。ずる休みはね、慢性化したらずる休みって言わないのよ」



眠ったのかそうでないのか、分からない寝覚めの中、ママの謎理論を遮るように枕に顔を沈める。

……セナの夢を見ていた。

夢と呼ぶには相応しくないくらい鮮明で、もうほとんど映像のようだったなと思う。


大きいなんてものじゃない、東京ドームも埋まっちゃいそうなくらいの球体が空に迫ってきていて。
そこへ向けてセナが、迷いなく手を伸ばす。

危ないよ、死んじゃうよって何度言っても、セナには届かなくて。


そうして、瞬きをした一瞬の間に、星もセナも、消える。

そんな、夢を。



「遅刻してもいいから、早く準備しちゃいなさい」



ママの声に、ゆっくりと顔を上げる。



「セナが学校に来たら行く」

「だから、そのセナって誰のことよ。学校の先生も、そんな名前の生徒一人もいないって」

「……っ」



あの後。

実際に、星は消えた。
というより、地球に落ちるはずの星という存在すら、初めから無かったことになっていた。


───あの喧騒の中、迷いの無い足取りでどこかへ行ってしまった、セナとともに。