一連の事件は全国ニュースになり、学校でもしばらく佐和の話題で持ちきりになった。素行不良だったことが仇となったのか、「佐和ならやりそう」「実際これまでも裏で結構やらかしてたとかも」「綺麗な顔してやることえげつないよな」佐和がいない教室ではそんな噂が飛び交っていて、私はただ耳を塞ぐことしかできなかった。


佐和とは連絡がつかなくなった。スマホの電源を切っているか、捨てたかだと思う。連絡手段を絶たれた私たちに、できることは見当たらなかった。


佐和 七瀬は父親を殺した。虐待に苦しむ家族を救うために、包丁一本で父親に立ち向かった。母親の身体にある傷と、包丁に付着した佐和の指紋だけで、この事実が成り立った。


だけど私は違うと思う。今ある事実は全て嘘。
私が知る佐和は、そんなことをする奴じゃない。


佐和と私は幼なじみだった。佐和の家は昔からあまり空気が良くなくて、佐和と母親と妹は、おばあちゃんの家で暮らしていた。その、おばあちゃんの家が私が住むマンションと同じだったことで知り合った。私と佐和の出会いは簡単でありきたりなものだ。


小学3年生の時、転校生がやってきた。寺岡 大和だから、ヤマと呼んでいた。ヤマと佐和と私――堂島 ゆり が3人で居るようになったのはその頃からだ。席が近かった。ただ、それだけの話。


佐和が高校に入学してすぐの時、佐和のおばあちゃんが死んだ。抱えていた持病が突然悪化したらしい。もろもろの事情で、佐和たちは父親と暮らすことになった。

それから、佐和の地獄が始まった。