*  *  *

 さっきオクトを襲いかかったのとは、比べ物にならないほどのマナの大爆発。ヘンタルの丘の地表を制御不能な力が荒れ狂い地面を抉っていった。

 高濃度のマナを含む爆風が連合軍のど真ん中を吹き荒れる。何も見えない。身体が焼けるように熱い。このまま、暴力の奔流に身を晒し続けると死ぬ……! そう思った直後に、爆風が弱まったように感じた。誰かが、多分シャリポが防壁の魔法を張ったのだろう。恐る恐る目を開けると、白い闇が晴れつつあった。

「これは……」

 ヘンタルの丘が真っ二つに割れていた。その周囲には、おびただしい数の連合軍の将兵たちが倒れている。運が良かった者は気を失っているだけか、まだマシな者はあるいは負傷で動けず……悪かったものは既に息をしていないかもしれない。

「うっ……」

 胃液が逆流するのを感じて、とっさに手で口を抑えた。
 勝っていた。勝っていたのに……最後の最後で! オレたちの作戦はいたずらに味方を殺すだけのものだったのか?

「何ぼさっとしているの!?」

 胸ぐらをつかまれ身体をゆすられた。リョウだ。その眼は死んでいなかった。

「追いなさい! 掴みかけた勝利を手放すのキミは!!」
「逃げた……?」
「はい、聖石兵器で退路を切り開いて馬で逃走したようです」

 シホが言った。彼女は既にクルシュにまたがっている。

「焼け野原に蹄の跡が残っている。奴は転移を使ってない」

 シャリポの言う通りだった。馬の蹄の形がくっきりと残っている。それは一直線に丘をえぐられた大地を南へ向かっていた。疲弊やダメージのためか、もう転移スキルは使っていない。

「動けるものだけ付いてこい。オクトを追うぞ!」