*  *  *

 マナの爆発は依然として魔法陣の中央で巻き起こっている。

 だが、しかし……

「きゃああああ!!!」
「ぐおおあああああ!!!!」

 声が変わった。女の甲高い悲鳴と、男の野太い叫び。どちらもオクトのものではない。

「ジュリア!? アグリ!?」

 魔法陣の中心にいたはずのオクトが消え、その場には鎖で拘束されていたはずのジュリアとアグリが爆発にさらされていた。

「くはっ。ゲン、だましたな……」

 後ろで声。身体中をマナの爆発に焼かれたオクトが、いつの間にか馬にまたがっていた。

「いつの間にっ!?」

 オレは魔法陣の一部を足で消し、機能を停止させる。二つの影がぐったりと崩れた。

「ありがとうなジュリア、キミから貰った〈空間転移〉スキルが役に立ったよ」
「そんなっ! オク……きゃああっ!!」

 爆発の中ジュリアは愕然とした表情でオクトを見つめていた。

「君たちの死は無駄にはしない。僕の王国の伝説として永遠に語り継いであげるから」
「オクトオオオ!!お前えええええ!!」

 野太いアグリの絶叫。敗者をいたぶる必要はない。オレが足で魔法陣の一部を消すと爆発は収まり、二人は崩れるように倒れた。

「あの魔法陣の中でスキルを使うだけの余裕があったのか……!?」
「僕が身に着けてる聖石兵器に何かしたのは分かったからね……と同じ数だけ魔法陣の中に追加したら逃げられると思った」

 同じ数……そうか、それでジュリアとアグリを自分の所に転移させたのか。鎖で拘束されている姿を見たが、やはりこの二人の武器や防具に聖石のような石が複数はめ込まれていた。

 けど、奴へのダメージが大きいことは確かだ。今ならまだ勝てる。

「聖石めがけてマナが集まった。てことは、キミ達の対聖石兵器とやらは、まやかしだったってわけだ。よくもまぁ、だましてくれた」

 オクトが剣を天に掲げた。装飾の聖石が輝く。まずい。

「全員後退! こいつから距離を取って!!」

 背中で声、とっさに状況を理解したリョウが叫ぶ!!

「遅いっ!!」

 周囲が白い闇に包まれた。