「逆族の頭目、ゲンに告ぐ。直ちに投降せよ!」

 戦場にオクトの声が響き渡る。アグリも馬鹿みたいにでかい声だったがそれ以上だ。おそらく音を増幅するようなスキルや魔法を手下の誰かが使ってるのだろう。

「6万の兵のよってお前たちは包囲されている。聖石兵器(クリスタルウェポン)を使うまでもない。お前たちに勝ち目はないのだ! 」

 やっぱり対聖石兵器(ターラクリスタルウェポン)のことも筒抜けらしい。

「6万、ねえ」

 オレたちはテントの裏に回り、後背に陣取る3万の別動隊を眺める。軍旗の模様は北と西の大陸から報告があったものと同じだ。それぞれの大陸に差し向けた討伐軍だろう。

「あの旗があるということは、やっぱり空間跳躍……プランAですね」

 アツシが頭の中で作戦を確認するように言う。

「ジュリアのスキルは予想通りだったか」

 ガズト村での前哨戦では、オクトとジュリアが何もない空間から現れた。クルシュの能力と同じような、遠隔地へ瞬間移動するスキルを彼女が持っているのは確かだった。
 もし、そのスキルで軍隊を丸ごとワープさせることが可能なら、戦争において最強最悪のカードとなる。オレたちはそれを恐れつつも、可能性が高いと考えていた。オレの〈n回連続攻撃〉がそうであるように一部のスキルには成長性がある。それにスキル効果を増幅させるスキルを持つ転生者がいてもおかしくない。

 しかしこの時点で、別働隊3万はすでに戦える兵士ではなくなっていた。言うまでもなく、シランの謀略の勝利だ。