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「要するにさ、ぱぱっとぶつかって、サクッと解決! それしか無いワケよ」

 作戦立案を担当するシランは、異世界の言葉でも独自のボキャブラリーを披露していた。オレたち以外の参加者は、賢者軍師の言葉遣いにとまどいながらも耳を傾ける。

「オクトは旧王宮の正規軍を総取りで10万。全軍を一度に動かすのはムリたんだろーけど、とりま3万くらいならイケるっしょ」
「こちらはようやく1万に届いた所です。10万の動員は不可能とは言え、我々が不利なのは間違いない」
「ゲリラ戦はどうでしょう? 兵力で劣っているなら、じわじわと消耗させるのが一番です」
「アタシ的にはナシよりのナシ。ゲリラはどうしてもパンピー巻き込むし。そーゆーのはダメじゃん」
「私も同感です。民の信頼を失えば、我々もオクトたちと同類になってしまう」

 よくもまぁ、この世界の言葉をギャル風にアレンジできるなと感心してしまう。そんなシランを中心に賢者、ギョンボーレの戦士、シホの部下たち、それに兵を率いて合流してきた旧王朝の軍人。誰もがそれぞれの立場から、意見を出し戦わせる。オクトが独裁でいくなら、こっちは頭脳の数で勝負だ。

「でもって、向こうには100個以上の聖石兵器(クリスタルウェポン)持っててさ―。それがマジヤバなわけよ。そ・こ・で! はい、アツシきゅんどぞー☆」
「聖石兵器対策を進めています」

 アツシの言葉に、賢者以外の視線が集中する。

「先の戦いだ回収した聖石兵器を研究して、聖石の力を無効化するものを作っています。対聖石兵器(ターラクリスタルウェポン)とでも言いましょうか…?」

 会場がどよめいた。『ターラ』はこの世界の言葉で、否定や打ち消しを意味する。聖石兵器(クリスタルウェポン)はオクト達の造語で、この世界に強制的に広められた英語だが、オレたちまでそれにならって「アンチクリスタルウェポン」なんて言葉を作りたくはない。だから『ターラ』の語を用いて呼ぶことにした。

「そんなものが!」
「すでに実用段階に入ってます。聖石とは自然界のエネルギーであるマナを調整するもの。ですから、その土地のマナを一時的にゼロにしてしまえば、理論上は聖石兵器は使えなくなります」
「それはまさか……戦場を(ウィー)の支配域にするということですか?」

 人間よりも聖石のメカニズムに詳しいシャリポが尋ねる。この世界の人間は聖石でマナをコントロールすることによって繁栄した。しかしこの世界には、生命エネルギーであるマナが存在せず聖石が発生しない地域がある。それこそが魔族の住まう(ウィー)の領域だ。

「そのとおりです。聖石に周辺域のマナを全て吸い取らせれば、擬似的にその場は(ウィー)の領域になります」
「危険すぎる!! 下手すれば、その場に魔王が誕生しかねない!!」
「はい。ですから使えるのはごく短時間。しかも一度だけ。実はそれも、シランさんが短期決戦を主張する理由です」

 議場が静まり返る。魔王が生まれるかも知れない。その言葉に、誰もが押し黙った。