オベロン王が送ってきた紋章旗が翻る。2頭のクルシュが書物を守るように並んでいる様を図案化した紋章。大賢者のみが使うことを許される軍旗だ。

 拠点はすぐに決まった。オクトが本拠地とする王都から見て南西。ヘンタル州の州都にして、東の大陸有数の城塞都市ギーブだ。
 リョウが要請すると、この街も連合軍への参加を表明した。すぐにシラン隊と、ギョンボーレ隊が入城した。

「三方を湖と河に囲まれ、しかも本城は断崖の上……まさしく天然の要塞ね」
「それだけじゃない。この河を下れば交易都市バトレバがある。ヒト、モノ、カネ、それに情報の大動脈というわけだ。さすがオレたちの織田信長だな」

 このギーブは、三英雄時代にノブナーグ王が建設した城が始まりとされている。雑学王のハルマは、「ギーブ」という地名は、かの戦国大名が本拠とした「岐阜」にちなんでいるのではと推測していた。

 オレ達は城塞の中で最も高い塔から周囲を眺めた。天然の要塞の上には二重の城壁と無数の塔が立つ。さらにこの本城を取り囲むように、四つの砦が守りを固める。まさしく難攻不落。この城がオレたちの側についてくれて本当に良かった。

 塔からは、四方から人が集まってくる様子が見えた。ある者は一人で、ある者は部隊を率いて。ある者は船で、ある者は街道を。反オクトの意思を明確にした、大陸中の戦士たち。その数は1万に達しようとしていた。
 世界規模の戦争になるとは言え、各地で半端な戦いを繰り返すわけには行かない。やるならばどこかで一大決戦を挑み、早期決着を図る。オクトも同じ思いのはずだ。この城塞に集う兵士はその決戦の主力だ。

「そろそろ軍議の時間よ。下へ行こう」