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「9歳って言ったら、日本なら何も考えずに遊びまわってる年頃だもん。そんな子に、人間の街を焼く責任を負わせられる?」

 控えの間でリョウは話した。
 その通りだ。今回の戦いは魔王討伐とは違う。人間と戦い、人間を殺し、場合によっては街や城を攻撃しなければならない。その責任を持つのは、オレたちでなければいけない。だからリョウは、私戦にこだわったんだ。

「恥ずかしい。私は……オクトを倒すこと目を奪われるあまり、姫様のことを思いやれなかった。確かにこの戦争は、私たち転生者の責任でやるべきです」

 シホは深々と頭を下げる。その目には涙が浮かんでいた。

「ううん、私だって最初は大義名分が欲しかった。でも……姫があまりにしっかりし過ぎていた。アレ以上しっかりしちゃいけないって思ったんだ」

 その時、扉をノックする音が控えの間に響いた。シホが扉を開くと、侍女が立っていた。

「殿下が皆様をお呼びです。但し、謁見の間ではなく、殿下の私室へ来るように、と」