*  *  *

 オクトが二言三言、門番たちと話すとそれだけで村の中に通された。オレだけの時とは真逆の対応。これが言葉が通じるということか。オクトたちは村の中央にまっすぐ向かい、そこにある石造りの建物の扉を開いた。丘の上からも見えた教会のようなあの塔だ。

「え……?」

 この塔は、外から見ると窓のようなものが無かった。だから真っ暗な内部を想像していたけど……

 明るい?

 屋内はまるで陽光のような柔らかな光に満たされていた。
 空間の中心に、木で階段状に組まれた祭壇のようなものがあり、その上に巨大な水晶のような石が3つ浮かんでいる。元の世界のサイズ感で言えば、アレは…… 消火器。そう、ちょうど消火器くらいの長さと太さ。そんな巨大な宝石だ。

 石に見とれるなんて初めてだった。元の世界では、大きな宝石なんて写真でしか見たことないけど、アレとは根本的に違う輝きだ。外部の光が反射したものじゃない。石そのものが光っている。建物の内部が明るいのもこの光のおかげだ。

「ガードラ ベッツ ヴァーシュト タンセル……」
「ええ、ここに来る前にも凶暴化したモンスターと遭遇しました」

 祭壇の下には髪も髭も白い老人がいた。この村の長、もしくはこの祭壇を守る神官、あるいはその両方といった雰囲気だ。

「マルダカンサ グス ナー ラノ テデット ヴェシュ ヤ?」
「恐らくは。ですが魔王討伐は俺たち転生者の務めです」

 オクトが老人に日本語で話しかけると、老人は謎言語で応える。

「パッサ ラット ガズー ギノ ヤ?」
「もちろん! ですが、それには条件が」
「ママヌ?」
「魔王の眷属1頭とこの聖石1つを交換していただきたい」
「パスタンテール……」
「わかってます。ですが、魔王討伐のために我々もそれが必要なのです。どうかご協力を……」
「………タヌー バスパラビナ」

 本当に言葉が通じてる……これが〈自動翻訳〉か。