*  *  *

「センディ……センディ……!」

 縄をおろしてセンディを解放すると、キンダーは小さな身体を抱きしめて涙を流した。

「一件落着、だな」
「いや……もうひとりいるだろ。アレは誰だ?」

 リョウはイーズルが縄を解いている、もうひとりの子供を見る。

「こいつは……」

 イーズルが絶句する。

「どうした……? あっ!?」

 オレはイーズルから預かっている松明を動かし、子供の顔を照らした。オレンジ色に光に照らされる、明るい色の長髪。気を失ったままの顔は、驚くほど美少年(あるいは美少女?)だ。そして何より……

「エルフ……?」

 とがった耳。ツヤがあってサラリとした質感の髪の隙間から、ツンと細い三角形の耳が突き出ている。サスルポはオレたちがよく知るファンタジー作品のオークにそっくりだったが、この子はまるでエルフだ。

「えるふ? この こども ギョンボーレだ」

 イーズルが言う。ギョンボーレ? オレたちが抱くエルフのイメージとだいぶ語感が違うけど、それがこの子の種族名なのか?

「このせかい ひと いがいの しゅぞくも いたのか!?」
「もりのおく すむ まほうを つかう しゅぞく このあたりでは めずらしい」

 魔法を使う種族が、センディとともにサスルポに捕われていた。聖石と関係があるのか?

「ゲン!」

 背後で声。リョウが戻ってきた。

「おうリョウ、片付いたぞ。センディも無事……」
「きて!! 洞窟の外!!」