* * *
「新しい聖石、か……」
オレはみんなに村長から聞いた話を説明した。この村周辺のどこかに、発生する聖石の原石。それを再び聖石堂に安置すれば、村の滅亡を避けられる。その話を盗み聞きしていたセンディはひとりで探索に行ってしまった。
「探しに行こう」
リョウの一声に、全員が頷いた。
「ちょっと待ってくれ!」
オレは思わず立ち上がる。
「これはオレが引き起こした問題だ。聖石探しはオレの落とし前だし、センディがいなくなったのも……」
「バカじゃないの!?」
アマネの怒声。涙目だった。
「子供一人いなくなってんだよ? 落とし前がどーとか言ってる場合!?」
「…………」
「だよね」
シランもそこに入ってくる。
「聖石の件も悪いのはオクトだし。ゲンゲンが全部が背負うのイミフ」
「ゲンさん、一人で抱え込みすぎです」
「むしろお前、被害者だからね?」
はぐれ者たちは次々と声を上げる。
「責任があるって言うなら、むしろ転生者全員の問題じゃない? 落とし前は私たち全員で付けるべきよ」
最後にリョウがそう言った。ゆっくりとオレを諭すような口調で。
「決まりだな」
アキラ兄さんの声はいつもの穏やかなものに戻っていた。いつも通りその声で、方針は決定する。
「センディの ばしょ こころあたり ない?」
リョウが尋ねるが、キンダーは押し黙ったまま首を振る。ハルマが腕を組み、広場を照らす篝火を見つめながら考える。
「村長の話だと、マナが集まる場所に聖石が発生するんですよね……? キンダーさん マナ どういうばしょ できる?」
「………しぜんが ふかい ばしょ もりの おく どうくつや たいじゅ わきみず そういうところ」
洞窟に大樹に湧き水、森の中にはそんな場所はたくさんある。
「……あ!」
アマネが声を出す。
「どうした、アマネ?」
「ええっと……うん。前に子供たちが話してたんだけど……ネーラン、いるでしょ? あの子が狩りに行った時の話なんだけど……」
ネーランは子どもたち中では最年長の少年だ。成人を控えた彼が自分の弓を作って父の狩りを手伝い始めたことはオレも聞いていた。
「入り口から湧き水が流れる大きな洞窟を見つけたって……」
そういえば洞窟と湧き水を覚えて帰ってきたのはアマネだ。その事を思い出す。ネーランは初めて見た森の奥の様子を、アマネや年下の子どもたちに教えたのだろう。
「ネーラン わきみず でる どうくつ しってた」
リョウはキンダーにアマネの日本語を翻訳して説明する。
「なんだって……」
キンダーの顔が瞬時に青くなっていった。
「わきみず どうくつは サスルポの すみか……」
その単語を聞いて、オレの心臓が爆発しそうになる。サスルポ……センディが言っていた熊を倒す巨大なモンスター。
「そのこと センディ しってるか?」
「おしえた でも どこまで りかい しているか……」
確かに。センディは大人の言いつけよりも好奇心が勝る年頃だ。実際には見たこともないモンスターをどのくらい恐れているかわからない。
「アマネ、その場所が何処にあるかネーランは言ってたか?」
「うん、ガズト山の方だって」
ガズト山か。村の真北にある、平野部に突き出すようにそびえる。この地域で最も目立つ山だ。
「なら、ネーランの父親にその洞窟まで案内してもらわないと。まずは山を降りよう」
「新しい聖石、か……」
オレはみんなに村長から聞いた話を説明した。この村周辺のどこかに、発生する聖石の原石。それを再び聖石堂に安置すれば、村の滅亡を避けられる。その話を盗み聞きしていたセンディはひとりで探索に行ってしまった。
「探しに行こう」
リョウの一声に、全員が頷いた。
「ちょっと待ってくれ!」
オレは思わず立ち上がる。
「これはオレが引き起こした問題だ。聖石探しはオレの落とし前だし、センディがいなくなったのも……」
「バカじゃないの!?」
アマネの怒声。涙目だった。
「子供一人いなくなってんだよ? 落とし前がどーとか言ってる場合!?」
「…………」
「だよね」
シランもそこに入ってくる。
「聖石の件も悪いのはオクトだし。ゲンゲンが全部が背負うのイミフ」
「ゲンさん、一人で抱え込みすぎです」
「むしろお前、被害者だからね?」
はぐれ者たちは次々と声を上げる。
「責任があるって言うなら、むしろ転生者全員の問題じゃない? 落とし前は私たち全員で付けるべきよ」
最後にリョウがそう言った。ゆっくりとオレを諭すような口調で。
「決まりだな」
アキラ兄さんの声はいつもの穏やかなものに戻っていた。いつも通りその声で、方針は決定する。
「センディの ばしょ こころあたり ない?」
リョウが尋ねるが、キンダーは押し黙ったまま首を振る。ハルマが腕を組み、広場を照らす篝火を見つめながら考える。
「村長の話だと、マナが集まる場所に聖石が発生するんですよね……? キンダーさん マナ どういうばしょ できる?」
「………しぜんが ふかい ばしょ もりの おく どうくつや たいじゅ わきみず そういうところ」
洞窟に大樹に湧き水、森の中にはそんな場所はたくさんある。
「……あ!」
アマネが声を出す。
「どうした、アマネ?」
「ええっと……うん。前に子供たちが話してたんだけど……ネーラン、いるでしょ? あの子が狩りに行った時の話なんだけど……」
ネーランは子どもたち中では最年長の少年だ。成人を控えた彼が自分の弓を作って父の狩りを手伝い始めたことはオレも聞いていた。
「入り口から湧き水が流れる大きな洞窟を見つけたって……」
そういえば洞窟と湧き水を覚えて帰ってきたのはアマネだ。その事を思い出す。ネーランは初めて見た森の奥の様子を、アマネや年下の子どもたちに教えたのだろう。
「ネーラン わきみず でる どうくつ しってた」
リョウはキンダーにアマネの日本語を翻訳して説明する。
「なんだって……」
キンダーの顔が瞬時に青くなっていった。
「わきみず どうくつは サスルポの すみか……」
その単語を聞いて、オレの心臓が爆発しそうになる。サスルポ……センディが言っていた熊を倒す巨大なモンスター。
「そのこと センディ しってるか?」
「おしえた でも どこまで りかい しているか……」
確かに。センディは大人の言いつけよりも好奇心が勝る年頃だ。実際には見たこともないモンスターをどのくらい恐れているかわからない。
「アマネ、その場所が何処にあるかネーランは言ってたか?」
「うん、ガズト山の方だって」
ガズト山か。村の真北にある、平野部に突き出すようにそびえる。この地域で最も目立つ山だ。
「なら、ネーランの父親にその洞窟まで案内してもらわないと。まずは山を降りよう」