* * *
バシャバシャと大きな水しぶきを立てて、子供たちが川で遊んでいる。
「よーし、思ったとおりだ!」
「何が?」
翌日、オレたちはまた村を訪れていた。ただし、あの門番がいる入り口ではなく裏手側に。
村は高さ2メートルくらいの柵に覆われ、門番が立つ入り口が唯一の出入り口となっている。ただ、柵は等間隔に立てた丸太に横棒を結びつけただけの簡単な作りで、子供なら隙間から抜け出せる。
そして柵から抜け出して坂を下れば川が流れていた。あの暴風雨が過ぎ去り、流速は元に戻りつつある。いつもよりやや強いくらいの流れ、子どもたちがここを遊び場にしないはずがない。昨夜立てた予想は、見事に的中していた。
「よし」
オレは川原に下りた。子どもたちの一人がこちらに気づき、仲間たちに伝える。水を掛け合うのを止め、一斉にこちらを見てくる。
「トゥキトマ ヤ?」
一人が、やっぱりなんだかわからない言葉をかけてくる。さぁ、ここからだ。最初は……何がいいか。何か誤解しようがないもの……ああ、これだ!
オレは川に手をつっこみ石をひとつ拾い上げた。それを子どもたちに見せる。
「ら……ラノ ヤ?」
沈黙。なんだこいつは、という目。ビビるな。押していけ!
「ラノ ヤ? ラノ ヤ!?」
子どもたちがざわつく。ひそひそと何かを話している。いや、大丈夫だ。いけるはずだ。
「ラノ!! ヤ!!?」
少し大仰に、左手に持った石を右手で指差しながら、同じ言葉を叫び続ける。すると子供の一人がポツリと言った。
「……トク?」
きた!!
「トク!! ラノ トク ヤ!!?」
子どもたちは頷く。よし、多分間違いない。これは『トク』だ。
「ありがとう!!」
オレは背負っていたカゴを下ろすと、中身の一つ取り出し、その子に差し出した。ここに来る途中に採ってきた木の実だ。直径2センチ位の赤紫色の実。ひとつ食べてみたけど、甘酸っぱくて子供のおやつには丁度いい味だった。
子供はそれを受け取るとすぐに口に放り入れる。2、3回噛んで満足そうな笑みを浮かべると、ペッと種だけ吐き捨てる。
「ラノ ヤ?」
オレはまた同じように、その木の実を指して聞く。今度は別の子が答える。
「ペペット」
よし、木の実は『ペペット』だ。いや、もしかしたら『ペペット』という種類の実かもしれない。まぁ、ゆくゆく分かるだろう。その子にペペットを渡す。
「ラノ ヤ?」
次はカゴを指差した。
「アザー!!」
ルールが分かったのか、次は大勢の子供達が一斉に答えた。その中で一番早かった子に賞品を渡す。
こんな調子で、更に4回質問を繰り返した。水、木、草、村……「草」が「笑える」と同じ『ウケル』なのは偶然にしては出来すぎだろ。
「ね、ねえ ゲン!!」
リョウが叫んで川下の方を指差す。血相を変えた男が槍を持ってこちらに走ってきた。例の門番の一人だ。
「ジンラータ ミロヴィア!?」
たぶんオレたちが子どもに危害を加えると思ったのだろう。彼にしてみればオレは超不審者だ。今の語学レベルじゃ、弁解も出来ない。
「リョウ、アツシ、逃げるぞ!!」
「ちょっとゲン!?」
オレはそう言って走り出す。リョウとアツシも慌ててそれに続く。
とりあえず試すべきことは試した。結果は上々だ。
バシャバシャと大きな水しぶきを立てて、子供たちが川で遊んでいる。
「よーし、思ったとおりだ!」
「何が?」
翌日、オレたちはまた村を訪れていた。ただし、あの門番がいる入り口ではなく裏手側に。
村は高さ2メートルくらいの柵に覆われ、門番が立つ入り口が唯一の出入り口となっている。ただ、柵は等間隔に立てた丸太に横棒を結びつけただけの簡単な作りで、子供なら隙間から抜け出せる。
そして柵から抜け出して坂を下れば川が流れていた。あの暴風雨が過ぎ去り、流速は元に戻りつつある。いつもよりやや強いくらいの流れ、子どもたちがここを遊び場にしないはずがない。昨夜立てた予想は、見事に的中していた。
「よし」
オレは川原に下りた。子どもたちの一人がこちらに気づき、仲間たちに伝える。水を掛け合うのを止め、一斉にこちらを見てくる。
「トゥキトマ ヤ?」
一人が、やっぱりなんだかわからない言葉をかけてくる。さぁ、ここからだ。最初は……何がいいか。何か誤解しようがないもの……ああ、これだ!
オレは川に手をつっこみ石をひとつ拾い上げた。それを子どもたちに見せる。
「ら……ラノ ヤ?」
沈黙。なんだこいつは、という目。ビビるな。押していけ!
「ラノ ヤ? ラノ ヤ!?」
子どもたちがざわつく。ひそひそと何かを話している。いや、大丈夫だ。いけるはずだ。
「ラノ!! ヤ!!?」
少し大仰に、左手に持った石を右手で指差しながら、同じ言葉を叫び続ける。すると子供の一人がポツリと言った。
「……トク?」
きた!!
「トク!! ラノ トク ヤ!!?」
子どもたちは頷く。よし、多分間違いない。これは『トク』だ。
「ありがとう!!」
オレは背負っていたカゴを下ろすと、中身の一つ取り出し、その子に差し出した。ここに来る途中に採ってきた木の実だ。直径2センチ位の赤紫色の実。ひとつ食べてみたけど、甘酸っぱくて子供のおやつには丁度いい味だった。
子供はそれを受け取るとすぐに口に放り入れる。2、3回噛んで満足そうな笑みを浮かべると、ペッと種だけ吐き捨てる。
「ラノ ヤ?」
オレはまた同じように、その木の実を指して聞く。今度は別の子が答える。
「ペペット」
よし、木の実は『ペペット』だ。いや、もしかしたら『ペペット』という種類の実かもしれない。まぁ、ゆくゆく分かるだろう。その子にペペットを渡す。
「ラノ ヤ?」
次はカゴを指差した。
「アザー!!」
ルールが分かったのか、次は大勢の子供達が一斉に答えた。その中で一番早かった子に賞品を渡す。
こんな調子で、更に4回質問を繰り返した。水、木、草、村……「草」が「笑える」と同じ『ウケル』なのは偶然にしては出来すぎだろ。
「ね、ねえ ゲン!!」
リョウが叫んで川下の方を指差す。血相を変えた男が槍を持ってこちらに走ってきた。例の門番の一人だ。
「ジンラータ ミロヴィア!?」
たぶんオレたちが子どもに危害を加えると思ったのだろう。彼にしてみればオレは超不審者だ。今の語学レベルじゃ、弁解も出来ない。
「リョウ、アツシ、逃げるぞ!!」
「ちょっとゲン!?」
オレはそう言って走り出す。リョウとアツシも慌ててそれに続く。
とりあえず試すべきことは試した。結果は上々だ。