*  *  *

「ゴフゥッ!?」

 丸一日かけて戻ってきた村で、門番に殴り飛ばされた。さらに手にした槍の柄で、倒れたオレの頭や腹を打ち付ける。何度も、何度も。当然だ。オレたちはこうされるだけの事をした。とにかく謝らないと……。でも、この世界で『ごめんなさい』ってどう言うんだ? わからない。でもせめて……。
 オレは身体を転がして、地面に伏せる。そして額に土をつけて、日本語でいった。

「悪かった!!」

 手に握っていた聖石のかけらを差し出すように前に置く。

「これしか、取り返せなかった。これでどのくらい気休めになるのかわからない! あとは殴るなり蹴るなりしてくれ!!」

 二人は何かを話し合っているようだった。やがて、一人が聖石を拾い上げる。

「アー ミスクィ タラ タ ラット ゼト パ! ガラヌ ラノ テデット ペセルパー カーラ ジンラット!!」

 早口で何かをまくし立てた後、二人は門の奥へ消えていった。

 雹にうたれ、激流に流され、暴風雨の中を歩き、最後に門番に殴られまくる。限界だった、動く気力すらない。

 しばらくそのままでいたが、急に雨足が弱まった。最後の力を振り絞り、身体を仰向けにする。雲の間から太陽の光が差し込むのが見えた。

「よかった……」

 そこでオレの意識はブツリと途切れた。