ズタボロだ……。

 激流にもみくちゃにされながらも対岸に流れ着いた。オクトたちも追って来ない。諦めたのか、それとも死んだと思われたか?

 実際、よく生き延びた。頭ん中が真っ白になって何をどう考えていたのかも思い出せない。アレが無我夢中というヤツか……? この世界での経験はあの3人の方がはるかに上だ。いくらSSRスキル持ちでもまともにやって勝てるとは思えない。そんな連中を出し抜くために、とっさに取った方法が増水した川へのダイブだった。母方のじーちゃんが田舎で米を作っている。そんなじーちゃんからは、増水した川の恐ろしさは嫌というほど聞かされていた。じーちゃんの古い友だちの孫が、田んぼの様子を見に行ったまま川に流されてしまったと言う話をこの前聞いたばかりだったのに……。2度めの死だってあり得たのに、オレの身体は勝手に動いていた。

 けど……。

 オレの手には聖石のかけらがしっかりと握られている。胸当てやダガーは激流に流されたが、コイツだけは手放さなかった。
 日照りや長雨の恐ろしさも、じーちゃんは教えてくれた。不作は、農家にとって死活問題だ。それがこの聖石によって引き起こされるのだとしたら、これは元の場所に戻さなくちゃいけない。豪雨に強風、そして落雷。ほんの数メートル先すら見えないような悪天候の中、オレは川沿いを歩き続けた。