「入江先輩、束縛とかすごいらしいの」

「え? 束縛?」

「うん。それで友達耐えられなくて別れたんだけど……。執着心もすごいらしくて、別れた後なのに、ずいぶん付きまとわれたんだって」

「……」

 別れた後なのに……。

「もし杏が先輩と付き合ってたら、大丈夫かなって思って。ゴメンね、こんなこと余計なお世話だと思ったんだけど……」

「ううん、そんなことないよ。教えてくれてありがとう」

「気を付けてね」そう言って彼女は、自分のクラスに戻って行った。

 確かに先輩の過去は詳しくは分からない。優しい言葉をかけてくれる先輩しか知らない。でももし、彼女の言うことが本当だったら?

 あの時『その人と上手くいかないことを願うしかないね』そう言った先輩の顔を思い出し、小さく体が震えた。