私が夢見る朝日を

 手術室に向かう前のベッドが、みんなとの最後の別れの場だった。

 これから手術室に入って、人工脳と私の本来の脳の入れ替えを行う。人工脳の機能を停止させる前に全身麻酔で眠りにつくけれど、そうしたら私はもうしばらく、目覚めることはない。

 だから、ここでお別れ。ベッドの両サイドで、琴美と愁くんがそれぞれ私の手を握る。お母さんはベッドの足元で、泣きそうになるのを必死でこらえているように見えた。

 この温もりを、この感触を忘れないでって、琴美に何度も念押しされた。

 大丈夫、もう覚えたよ。絶対忘れない。私はこの温もりを通して、存在を感じる。その存在を道標にして、いつか絶対に帰ってくるんだから。

 最後だというのに、会話はなかなか弾まなかった。でも、寂しくはなかった。私はもう絶望してばかりじゃない。

 愁くんの顔を見る。力強い視線が、私をしっかり見つめている。

「じゃあ、行ってきます」
 私は精一杯笑ってそう言った。

 長い長い旅になるかもしれない。ひとりぼっちに震えるかもしれない。

 だけど私はいっぱいもらったから大丈夫。勇気も、希望も、大切な気持ちも。

 いつかまた――あの場所で見る朝日を、私は夢見ている。