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屋敷にもどると、中には誰の気配もなかった。
降り積もったほこりが音もなく舞い上がるだけで、他に動く物は何もない。
寝室にはルクスの姿すらなかった。
乱れたシーツだけが彼のいた証だった。
いつものように悪人を探しに出かけたのだろうか。
しかし、それからいくら待ってみてもルクスは帰ってこなかった。
なんということなのでしょう。
なぜみんなわたくしを一人おいて行ってしまうのですか。
屋敷の中には人の罪がほこりとなって降り積もり、ミルヒの小さな足跡も、エレナが箒ではいた跡も、すべてが白く覆われて消えていくばかりだった。
すべての者が去った今、時を刻むものは何もない。
暖炉の火は消え、灯る明かりはなく、エレナは冷たいベッドに横たわったまま眠ることもなくただじっとしているだけだった。
どれくらい時がたったのかすら、もう気にもならなかった。
この寂しさもこの苦しみもこの悲しみも永遠に続くというのなら、わたくしも降り積もるほこりに埋もれて消えてしまえばいい。
どうしてみなわたくしの前からいなくなってしまうのですか。
ただ痛みだけを残して。
それなら最初から現れなければいいではありませんか。
消え去るためにわざわざ会いに来ることはないではありませんか。
それとも、わたくしが来たからいなくなってしまったというのですか。
これなら誰とも会わなければ良かった。
人を好きになることも嫌いになることも寂しくなることも悲しくなることも何もなくて済んだのに。
最初から一人で良かったのに。
エレナは闇の中でただ闇を見つめているしかなかった。
もはや眠っているのか闇を見ているのか、夢を見ているのか自分でも区別がつかなくなっていた。
どれほどの時がたっただろうか。
カササッ……。
物音が聞こえた。
カササ……。
エレナはベッドの上で起き上がった。
カサササ……。
いるのですか?
フィアトルクス!
部屋にぼんやりとした明かりが満ちる。
ルクスですか?
カサ……。
辺りを見回しても姿は見えない。
カサカサ……。
でも音は確かに聞こえる。