エレナは二人のわきを通って自室へ行こうとした。
「体調がすぐれませんので、失礼します」
だが、ルクスはエレナの方を見もせず、サキュバスと話している。
「やっと俺の女になる気になったか」
は?
どういうことですの?
「あったりまえじゃーん。ていうか、あたし、帝王様に最初っからメロメロなの知ってるでしょぉ」
「あれほど嫌がっていたではないか」
「えー、誰それ? そんなことないしぃ。帝王様のことが嫌いな奴なんているんですかぁ? そいつ馬鹿なんじゃないの」
チラリとエレナの方に視線を向けながらサキュバスがルクスの体を撫で回している。
「あの、わたくしはここにおりますけど」
声をかけてもルクスに無視されてしまう。
見えていないというよりも、まるで自分がここに存在していないようだった。
どうやらルクスはサキュバスをエレナだと思っているらしい。
わたくしとこんなおかしな妖魔の見分けがつかないなんてどういうことですの?
冥界の帝王のくせに、妖魔の淫靡な魅力に惑わされるなんて。
何が帝王ですか、なさけない。
恥を知りなさいな。
どうしてわたくしの前に現れる殿方はどれも品性下劣なのでしょうか。
これでは王宮のウェイン王子と変わらないではないか。
サキュバスはこれみよがしにいちゃつくのをやめない。
「帝王様、向こうであたしとイイコトしましょうよ」
「どれ、おまえの痴態を愛でるとしようか」
「やだあ、もう、あたしに何させるんですかぁ」
「おまえは俺をどう楽しませたいのだ?」
「えー、言うんですかぁ。いやあん恥ずかしい。てか、言えないけどぉ、全部しちゃうしぃ」
と言うなり、サキュバスはペロリと舌を出すと、エレナに嘲笑を向けてからルクスに口づけた。
「んー、ブチュッ。あはーん。好き好き大好き帝王様ぁ。あたし、もう我慢できなーい。早くつれてってぇん」
「よかろう。俺の部屋へ来るがいい」
ルクスはサキュバスをお姫様のように抱き上げてキッチンを出て行く。
「ちょっと、あの……」
お姫様はわたくしでしょうに……。
置き去りにされたエレナは力なくへたり込んでしまった。
サキュバスに奪われた悔しさと、ルクスに無視された悲しさと、誰かに慰めてほしいという寂しさが同時に覆い被さってきて、立っていられないほど力が抜けてしまった。
なのに、体が火照って汗が止まらない。
あの赤い木の実の効き目がますます強くなっていくようだ。
でも、この体のうずきをおさめる方法をエレナはまだ知らなかった。
「ああ、お母様、どうかこのわたくしをお守りください」
エレナはなんとか立ち上がって自分の寝室にたどりつくと、ベッドの上に倒れてそのまま意識を失ってしまった。
「体調がすぐれませんので、失礼します」
だが、ルクスはエレナの方を見もせず、サキュバスと話している。
「やっと俺の女になる気になったか」
は?
どういうことですの?
「あったりまえじゃーん。ていうか、あたし、帝王様に最初っからメロメロなの知ってるでしょぉ」
「あれほど嫌がっていたではないか」
「えー、誰それ? そんなことないしぃ。帝王様のことが嫌いな奴なんているんですかぁ? そいつ馬鹿なんじゃないの」
チラリとエレナの方に視線を向けながらサキュバスがルクスの体を撫で回している。
「あの、わたくしはここにおりますけど」
声をかけてもルクスに無視されてしまう。
見えていないというよりも、まるで自分がここに存在していないようだった。
どうやらルクスはサキュバスをエレナだと思っているらしい。
わたくしとこんなおかしな妖魔の見分けがつかないなんてどういうことですの?
冥界の帝王のくせに、妖魔の淫靡な魅力に惑わされるなんて。
何が帝王ですか、なさけない。
恥を知りなさいな。
どうしてわたくしの前に現れる殿方はどれも品性下劣なのでしょうか。
これでは王宮のウェイン王子と変わらないではないか。
サキュバスはこれみよがしにいちゃつくのをやめない。
「帝王様、向こうであたしとイイコトしましょうよ」
「どれ、おまえの痴態を愛でるとしようか」
「やだあ、もう、あたしに何させるんですかぁ」
「おまえは俺をどう楽しませたいのだ?」
「えー、言うんですかぁ。いやあん恥ずかしい。てか、言えないけどぉ、全部しちゃうしぃ」
と言うなり、サキュバスはペロリと舌を出すと、エレナに嘲笑を向けてからルクスに口づけた。
「んー、ブチュッ。あはーん。好き好き大好き帝王様ぁ。あたし、もう我慢できなーい。早くつれてってぇん」
「よかろう。俺の部屋へ来るがいい」
ルクスはサキュバスをお姫様のように抱き上げてキッチンを出て行く。
「ちょっと、あの……」
お姫様はわたくしでしょうに……。
置き去りにされたエレナは力なくへたり込んでしまった。
サキュバスに奪われた悔しさと、ルクスに無視された悲しさと、誰かに慰めてほしいという寂しさが同時に覆い被さってきて、立っていられないほど力が抜けてしまった。
なのに、体が火照って汗が止まらない。
あの赤い木の実の効き目がますます強くなっていくようだ。
でも、この体のうずきをおさめる方法をエレナはまだ知らなかった。
「ああ、お母様、どうかこのわたくしをお守りください」
エレナはなんとか立ち上がって自分の寝室にたどりつくと、ベッドの上に倒れてそのまま意識を失ってしまった。