そんなエレナの様子を見て、しばらくミリアは思案を巡らせているようだった。

 そして、衛兵たちを呼び戻すと、エレナを跪かせるように命じた。

 壇上からエレナの前へ下りて、頭を押さえつける。

「本来なら、ここで罪人を処刑するところですが、わたくしも人間です。少しくらい筋書を変えてもいいでしょう。城へ帰って父親の葬儀と埋葬くらいはさせてあげてもいいわね。連れて行きなさい」

 衛兵たちはミリアの縄を引っ張り上げて、再び引きずるようにしながら小広間から連れ出した。

 入れ替わりにクラクス王子が駆け込んでくる。

「ダッコダッコ」

 ミリアが王子を抱き上げて頬を触れ合わせる。

「よしよし、あなたは大切な切り札ですからね。わたくしのために役に立つのですよ」

 そして、世話係を呼びつけて命じた。

「おむつを替えなさい。お尻が臭いますよ」

「もうしわけございません。ただいま」

 王子を預けると、ミリアは扇で臭いを払った。

 まったく。

 早く王位を奪って、あんなクソガキとおさらばしたいものだわ。

 まあ、その前に、仕上げをしないといけないわね。

 ミリアは靴音を響かせながら小広間を出て、玄関へと向かった。