「どういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。あいつは俺の命令に従わなかった。動画を渡さないと殺すって言ったのに、そうしなかった。あいつは馬鹿だ。大馬鹿だ。動画を俺に渡せば幸せになれるとわかっていたのに、敢えてそうしなかった。自分の人生を、自分で棒に振った」
「……こっ、殺す? あいつは、死んだんですか……?」
 俺は零次の父親の腕をつかんで、震えながら言った。
「いや、今は生きてる。殺すつもりだけどな」
「息子なのに、ですか」
 零次の父親の言葉が信じられなくて、俺は思わずそう尋ねてしまった。
 ありえない。
 裏切ったから殺すなんて、考えが余り馬鹿げている。まるで俺の父さんみたいだ。
 父さんはそういう復讐みたいなのじゃなくて、金目当てで俺を殺そうとしたから、零次の父親よりよっぽどタチが悪いけど。

「俺はアイツを息子だと思ったことはねぇ! 血縁関係があるだけの他人だと思ってる! だから殺すんだよ!」
「……アンタに、零次は殺させません」
 絶対に殺させない。零次は必ず俺が守る。
「言ってろ。お前ごときが、アイツの自殺を止められるとは思えないけどな」
 零次の父親は覚めた口調で、とんでもないことをいった。
「じっ、自殺?」
「ああ。あいつはきっと、自殺しようとしている。あいつは俺に殺されるくらいなら、自殺をしようと考えるハズだ」
 俺は零次の父親の言葉を聞くや否や、急いで、江の島に向かった。