ピンポーン。
俺は深呼吸をしてから、零次の部屋のインターホンを押した。
「はい」
似ているけど、違う。零次の声じゃない。
零次より少し低くて、威圧感のある声。
もしかして、零次の父親か?
「君は……」
ドアを開けた男が、細い声で呟く。
男を見て、俺は固まった。
……こいつ、二か月くらい前に見た闇金の男にそっくりだ。
――いや、そっくりどころじゃない。恐らく本人だ。
「瀬戸海里です。零次の同級生で、貴方から金を借りてる井島信也の息子です」
俺は冷静を装って言った。
「瀬戸? そうか。君の母親、あいつと離婚したのか。それで苗字が変わったんだな」
あいつとは、恐らく父さんのことだろう。
「……はい。貴方が零次の父親ですか?」
俺は震えた声でそう口にした。
「ああ」
男は平然と頷いた。
――ああ、そうか。
零次は闇金の子供なんだ。
あいつが俺を監視したのは、俺が心配だったからじゃない。
コイツに言われて、俺を監視したんだ。
「アンタは、零次をこき使ったんですか?」
零次の父親は目を見開いた後、意地の悪い笑みを浮かべた。
「ああ。俺は零次に君が虐待されている動画を撮らせて、それを使って借金の保証人をしている君の祖父を脅して、金を返してもらおうとしていた」
それは金を返してもらうには有効だが、倫理的には、とても良くない方法だった。