「……手掛かりは、ここにしかないよな」
俺は零次と一緒に住んでたマンションの前で、独りでに呟いた。
零次がいなくなってから三日が過ぎた今日、俺はどうにか主治医の先生から外出許可を取り、ここに来ていた。
俺は三日前、俺が目を覚ましたのに気づいて病室に来た先生に、外出をしたいと申し出た。先生は『目が覚めたばかりなのに外出なんてとんでもない! 絶対ダメだ!』って言った。でも、俺は引き下がらなかった。どうしても、零次に会いたかったから。
結局先生は三日で懲りて、外出を許可してくれた。
零次はいなくなったあの日から、ずっと音沙汰がない。俺はラインのメッセも無料通話も無視されっぱなしだ。
零次はきっと、あの部屋に帰ってない。でも、もしかしたら……!
「はぁ……。俺は馬鹿だな。俺に会うのが嫌なら、帰ってないに決まっているのに」
俺は頭を抱えた。
自分で言ってて虚しくなってきた。
……帰ろうかなぁ。
零次の部屋のポストに郵便物が溜まってたら、大人しく帰ろう。郵便物が溜まってたら、部屋に誰もいない確率が高いだろうから。
一階の階段のそばには、たくさんのポストが並んでいた。
一体何個あるんだ。
確かこのマンションは十階建だから、一階ごとに十部屋あるとしたら、ポストの数は百か? ……多いな。
俺は眉間に皺を寄せながら、零次の部屋のポストを探した。
「あ、あった201」
零次の部屋が二階の右端だったからか、ポストは直ぐに見つかった。
俺は深呼吸をしてから、ポストを開けた。
「え……?」
ポストの中は、すっからかんだった。
――まさか。
俺は急いで零次の部屋に向かった。
あいつが帰っている可能性なんて、きっと十パーセントもない。
もしかしたら零次の親が部屋を売り払って、郵便物を持ってただけかもしれない。そう思っても、俺は確かめようとせずにはいられなかった。