「ふーん」
「じゃ、二人に連絡するか。……いたっ!」
 零次は突然、足を触りながら痛そうに顔をしかめた。
「えっ。零次どうした? 大丈夫か?」
「……悪い、海里。ちょっと二人と合流するの時間置いてからでいい? さっき足ドアにぶつけちゃってさ」
「それは全然いいけど、足大丈夫か?」
「ああ。……ちょっと痛い程度だから」
 そういうと、零次は俺の隣に座った。
 俺は何も言わずに立ち上がって、零次の目の前にいった。

「え、何」
「足、見せて。血とか出てたら大変だし」
「いや、いい」
 俺から目を逸らして、零次は言う。
 出会った時から見ている不自然な歩き方が、脳裏に浮かび上がる。
 ……嫌な予感がした。

「……見せないと靴、無理やり脱がせる」
「はぁー。わかったよ。見せればいいんだろみせれば!」
 投げやりにそう言って、零次は靴と靴下を縫いだ。
 零次の足を見て、俺は言葉を失った。
 左右の足首に、縄で縛り付けられたかのような跡がある。それにところどころに、擦り傷や青黒い痣なんかもある。はっきりいってかなり痛々しい。
「……なんでこんなことになってんだ」
「……一年くらい前に、色々あって」
 零次は俺から目を逸らして、ばつが悪そうに言葉を返した。
「零次、まさかお前も虐待されて……」
「違う! 俺は虐待は受けてない!」
 俺の言葉を渡って、零次は少しだけ大きな声で叫んだ。
「じゃあ、一体誰にやられたんだよ?」
 俺の言葉を無視して、零次はジャンバーのポケットから、包帯を取り出した。
 どうやらよっぽど誰にやられたか言いたくないらしい。
「これ、巻いて」
 包帯を俺に渡して、そう零次は言った。
「うん。わかった」
 渡された包帯を、俺は零次の両足に丁寧にまいた。
「……ありがと。奈緒ちゃんたち待ってるし、もう行こうぜ」
 俺に礼をいうと、靴と靴下を履きなおして零次は笑った。貼りついたような笑みだ。明らかに無理して笑っている。見てるだけで痛々しい。
「なぁ零次、どうしても言いたくないっていうなら詮索はしないけど、いつか教えろよ?」
 俺は零次の顔を覗きこんで、小声で言う。

「……いつかな」
 零次はそういって、作り笑いをした。