「早く食べないと、アイス溶けるわよ」
 俺達を見てフッと笑いながら、美和は言う。
「そんなに早く溶けないだろ。今の時期は冬みたいなもんだし」
 零次は随分冷静に突っ込んだ。
「そうかしらー。二人来るの遅かったから、結構時間たってると思うけど」
 悪戯っぽく口角を上げて笑いながら、美和は零次に言葉を返す。
 意地わるそうな顔だ。
「それを早くいえ!」
 零次は慌ててカップの蓋を開ける。
 アイスは少ししか溶けていなかった。
「全然溶けてないじゃん!」
「ええ。冗談だもの」
「美和ちゃん!」
 ひきつった笑みをして、零次はそう言った。どうやらちょっと怒っているらしい。
 俺は二人を見て笑いながら、スプーンでアイスをすくって、口に運んだ。

 目を丸くして、俺は驚く。

 虹色なのに、食べてみるとラムネの味がした。
 なんだコレ。……美味しい。

「フフフ。びっくりした? まさか虹色でラムネだとは思わないよね」
 目を丸くした俺を見ながら、奈緒は得意げにそういった。
「……うん。奈緒が食べてるのは何味なんだ?」
「これはストロベリーチーズケーキだよ。食べてみる?」
「えっ? いいのか?」
「うん。はい」
 スプーンでアイスをすくって、奈緒は俺に差し出してくれた。……間接キスだ。
 俺はなるべく冷静を装って、奈緒のスプーンを口に入れてアイスを食べた。
 ……確かにチーズケーキの味がする。
「……ストロベリーチーズケーキって、甘酸っぱい恋の味らしいわよー」
 間接キスをした俺と奈緒を交互に見ながら、美和はそう言って意地悪そうに笑った。
 思わず頬が赤く染まる。
「奈緒、ありがとう。うまかった」
 奈緒から目を逸らして、俺はスプーンを返した。
「うっ、うん!」
 奈緒は頬を赤くしながら、スプーンを受け取ってアイスをかきこんだ。
「アハハ! 二人とも見てて面白いくらい照れてんな! 美和ちゃん最高!」
 アイスを食べながら、零次は声を上げて笑った。あからさまに馬鹿にされている。