トイレの近くにあるベンチで俺達を待っていた奈緒と美和は、なにかよくわからないものの食べあいをしていた。
 カップのケースの中に、小さな丸い粒々が何十個も入っている。美和が持っているカップの粒粒は緑、青、オレンジ、黄色、白、ピンク、紫の七色だ。虹色だろうか。
 奈緒のカップに入っている粒々は美和とは打って変わって、白とピンクのだけだ。

「……それ、何」
 奈緒の真ん前に行って、俺は尋ねた。
「アイスだよ。海里くん知らないの?」
「え、アイス?」
 眉間に皺をよせて、奈緒のカップを覗き込む。
 アイスだって?
 じっと覗き込んでいると、粒々がゆっくり溶けた。
 本当にアイスだ。
 ……信じられない。
「うん。二人の分も買ってきたから食べなよ。海里くんはまだ体調悪いなら、時間置いた方がいいと思うけど」
「……いや、もう平気」
「そ? ならよかった。じゃあ美和、ちょっと持ってて」
「はいはい」
 奈緒は蓋をしたアイスを左隣にいる美和に渡すと、自分の右隣に置かれている紙袋の中から、アイスを二カップと、スプーンを二つ取り出した。カップに入っている粒々は一つは美和と同じ虹色で、もう一つは薄い水色とピンク色になっていた。
「はい、海里くん。何が良いかわかんなかったから、とりあえず一番人気の買っておいたよ」
 奈緒はそう言って、俺に虹色の粒々が入ったカップとスプーンを差し出してくれた。
「あっ、ありがとう」
 俺はそれを受け取って、戸惑いながら礼を言った。
「はい、零次くん。ハニーコットンキャンディで合ってるよね?」
「おう。ありがとう奈緒ちゃん」
 俺の隣にいる零次は、そう言って差し出されたカップとスプーンを受け取った。
「零次君って、見かけによらず可愛いとこあるんだね」
 美和から食べかけのアイスのカップを受け取ると、奈緒はそういって、クスクスと笑った。
「なっ!? 笑うなよ」
「えーだって、チャラチャラしてる零次くんがアイス買って来るけど、何がいいって聞いたらハニーコットンキャンデイだっていうんだもん。ギャップが凄すぎるよ」
「……悪かったなチャラチャラしてて」
 零次はそう言って、頬を赤くした。
「アハハ! 零次、かわいいな」
 俺はカップの蓋をあけながら、笑っていう。
「うるせぇ!」
 俺の頭をカップで軽く叩いて、零次は不満げに口を尖らせた。