「海里くん、何乗る?」
四人で遊園地に入ると、奈緒が俺の左腕をつかんで、上目遣いをして聞いてきた。
「えっと……」
遊園地は入り口のそばからみただけでもジェットコースターやバイキング、コーヒーカップ、メリーゴーランド、空中ブランコなど実に様々な乗り物があった。色々ありすぎて、何から乗ればいいのかぜんぜんわからない。
「海里、ジェットコースター乗ろうぜ?」
答えを決めかねている俺の背中を叩いて、零次はとんでもないことをいってのけた。
「絶叫は嫌いだ」
零次を睨みつけて、俺は不平を漏らす。
絶叫系の乗り物は、本当に虐待をされる前から苦手だ。
「え、マジ? 乗ったら吐くくらい苦手?」
俺の顔を見て、零次は楽しそうに笑う。
あからさまに馬鹿にされている。
「……たぶん」
「へーえ? じゃあ四人で乗るか!」
いやなんでそうなった。可笑しいだろ。
「のらない!」
俺は顔をしかめて、叫んだ。
「強制だ!」
零次は俺の右腕をつかんで、ジェットコースターのとこに向かい始めた。
「なっ!? 放せっ!」
「うっ……。おぇっ……」
ジェットコースターに乗り終わると、俺は個室のトイレで嘔吐した。
気持ち悪い。胃が逆流した。
「うっ……」
「海里、大丈夫か? スポドリかってきたけど、飲めそう?」
便器に顔を近づけて吐いていると、零次がドアをノックしてそんなことを言ってきた。
俺は嘔吐物を流してから、何も言わずにドアを開けた。
「ごめん! マジで吐くと思ってなかった!」
零次は申し訳なさそうに頭を下げてから、スポーツドリンクを渡してきた。
「……零次はそういう奴だよな」
そういって、俺はスポーツドリンクを受け取った。
「え? どういう意味?」
壁に寄りかかってスポーツドリンクを飲んでる俺を見ながら、零次は首を傾げる。
「……いい意味でも悪い意味でも強引な奴ってこと」
「……それ褒めてんの? けなしてんの?」
「どっちも」
どうでもよさそうに言って、俺は五百ミリリットルのスポーツドリンクを飲み干す。
「飲むの早っ!」
「誰のせいだよ」
投げやりにそう言って、俺は空になったペットボトルをゴミ箱に捨ててトイレを出た。
「だから悪かったって!」
零次は慌てて、俺の後を追ってきた。