「……そうだな。アイツの所為だもんな。俺が太らせてやろうか」
 零次がにやにやと笑っていう。
「え?」
「揚げ物とか、甘いものとかバンバン食わせてやろうか?」
「え? ……いいのか?」
「ああ。むしろなんでダメだと思ったんだ?」
 零次が不思議そうに首を傾げる。
「……俺、飯抜かれるの日常茶飯事だったから、あんまり甘いモノとか、揚げ物食べたことなくて」
「誕生日ケーキとかクリスマスケーキも食べたことないのか?」
「そういうのは、片手で数えられるくらいの回数しか食べたことない」
「……海里、予定変更だ。スクバ買うのは明日にして、スイパラにいこう」
「スイパラって何?」
「スイーツパラダイス! 時間制でスイーツのバイキングができるとこ! ああもう! マジでお前の親殴りたい! 俺、お前が今どきの若者がどこにいってるかとか知らないのかわかるたびに、お前の親が腹正しくなる!!」
 零次は顔を怒りで真っ赤にして叫んだ。

「れっ、零次」
 零次は動揺した俺を見て、ハッと我に返った。
「悪い。……急に怒鳴るからびっくりしたよな」
「……うん」
「……俺が教えるから」
「え? 何を?」
「俺がお前に外の楽しさを教えるから。俺がお前を物知りにする。見たこともない景色を、たくさん見せるから」
 零次は俺の両手を握って、真剣な顔をして言った。
「うん。ありがとう」
 俺は笑って頷いた。

 俺はその後、本当に零次とスイパラにいった。
 バニラ、チョコレート、抹茶などのハーゲンダッツのアイスに、一口サイズなんしゅるいものケ―キ、かぼちゃやベリーのプリン、ミルフィーユ。
 スイパラにはたくさんの食べたことないスイーツがあって、本当にみたこともない景色が広がっていた。
 食べたことないものがありすぎて、どれから食べればいいか全然わからない。
「海里、困惑しすぎ」
 スイーツを見つめている俺の背中を、零次は笑って叩いた。
「だ、だって、スイーツありすぎて……」
「だからって固まるなよ。ぼーっとしてると、どんどん時間が過ぎるぞ?」
 確かに、時間は有限だ。
 バイキングが終わるまでは後一時間以上あるけど、こんなんではどんどんどん時間が過ぎてしまう。
「うっ。……わかった」
 俺は小さな声で頷いて、スイーツを選んだ。
 ……どれにしよう。
 全部美味しそうなんだよなぁ……。