「なんで零次の親監視カメラもってんの?」
「多分母親の浮気を疑ってたから、その証拠を集めるのに使うつもりだったんだと思う。ま、それ使う前に母親死んじまったけど」
 作り笑いをして、零次はいう。
「……そっか」
 俺は思わず顔を伏せた。
「……海里さ、掛け布団は買うの決定として、敷布団とソファはどっちがいい? 両方置いたらだいぶ狭くなるし、金もかかるからどっちかに絞りたいんだけど」
 気まずいのが嫌だったのか、零次は急に話題を変えた。
「あ、ソファだったら俺がソファで寝るから、そこらへんは気にしないでどっちがいいか考えていいぞ」
 俺が答えを言う前に、零次は笑ってそう言った。
「え、なんで」
「だってお前、夜は毎日うなされてんじゃん。それなのにソファなんかで寝かせられっかよ」
 それを言われると図星過ぎて、返す言葉もない。
「……でっ、でも、毎日ソファだと零次が大変だろ?」
「俺は平気だよ。海里よりはよっぽど寝つきいいから。で? どっちがいいんだ?」
「んと、ソファ」
「へぇ? なんで?」
 零次は俺の発言を聞いて、にやにやと笑う。意地の悪い笑みだ。
「……零次とソファでテレビ見たりしたいから」
 凄く小さな聞こえるか聞こえないかくらいの声で、俺は言った。
 零次は目を丸くして驚いた後、俺の火傷してない方の肩に腕をのっけて、とても嬉しそうに笑った。
「やめろ」
 俺は零次の手を振りほどいて、顔をしかめた。
「えーいいじゃん!」
「うざい」
「ククク。やっぱり海里はツンデレだな」
 零次が歯を出して、楽しそうに笑う。
「……ツンデレじゃない。早くソファ見に行こ」
「はいはい」
 眉間に皺を寄せて家具売り場に向かう俺の後を、零次は呆れながらついてきた。
 ついてくるのを、俺は心地いいと思った。虐待されるようになってから、誰かが後ろにいて心地いいなんて思ったこと一度も無かったのに。
 出会いはあまりに不可解で、意図がありまくりだとしか思えない。
 監視カメラをつけたことや死を怖がってることいい、可笑しな点は数え切れないほどある。それでも俺はそんな奴といるのを心地いいと、楽しいと心の底から思った。