「おはよー海里!」
 水族館に行った日の翌日。
 目を覚ますと、昨日と同じように台所にいる零次が声をかけてきた。
「おはよう、零次」
 心の中で深呼吸をしてから、俺は挨拶を返した。
 昨日よりは自然に返せた気がする。
「おう。海里、今日ホームセンターとかいって家具揃えてからお前の鞄買いに行きたいなーと思ってんだけど、それ以外に行きたいとこある?」
 朝ご飯をテーブルにおきながら、零次は首を傾げる。
「ないけど……俺、退学にさせられそうだし、鞄はいい」
「あーそれは俺がなんとかするから、鞄買い行こうぜ」
「え、お前、本当に学費払うの?」
「おう。払ってやるよ。わかったら行こうぜ?」
 俺の火傷してない方の肩に腕をのっけて、阿古羅は笑う。
「うん!」
 零れそうになった涙をこらえて、俺は頷いた。

 電車で一時間ほどで、ホームセンターに着いた。
 ホームセンターは入り口の前にはガーデニング用品やお花などの販売があり、中に入ると、工具やDIY用の壁に貼るシールや家具など、実に様々なものが販売していた。
「凄い色々あるな。零次のカメラもここで買ったのか?」
「ちげぇわ。アレは親父の忘れもんだよ。俺の家に親父がカメラ付きのぬいぐるみを忘れてったんだよ! それであの日の放課後返しに行こうと思ってたら昼休みにお前に出くわして、自殺したら嫌だと思ったからお前に渡したんだよ。それで、親父になくしたからカメラに映っているのを手掛かりにしてどこにあるか調べたいって嘘ついて映像見る機械貸してもらったんだよ!」
「ふーん?」
 確かにそれなら、つじつまは合うな……。