手に持っていたスマフォが、不意に通知音を立てた。
スマフォを見ると、ラインがきていた。
奈緒と美和と阿古羅と俺のグループから連絡が来ている。どうやら、奈緒がプリの写真を送ってくれたらしい。
俺はラインを起動して、送られてきたプリの写真を見た。写真の下の方に、ピンクのハートの中に日付がかかれたスタンプがある。阿古羅にラクガキのやり方を教わって、奈緒と一緒に選んだスタンプ。
「……楽しかったな」
涙が頬を伝う。
もっともっと、四人で遊びたかった。
でも、そんなのもう無理だよな。……こんな地獄、もう耐えられないし。
「あ……」
プリに映っている俺の鞄が開いていて、そこから、猫のぬいぐるみが顔を出していた。
俺はソファのそばに置かれている猫のぬいぐるみを手に取って、触った。
ゲーセンで阿古羅にいわれたことを思い出す。
『お前は白って、どんな色だと思う?』
『えっと……綺麗な色? 純粋みたいな』
『確かに綺麗な色だ。でも俺は、悲しい色だとも思う。
だって何色にも染まってないてことは、染まりたいって意志がないってことだろ。お前はもう二度とそんな風になるな。このぬいぐるみを見るたびにこうなったらダメだって、自分に言い聞かせろ』
涙が頬を伝う。
……ごめん、阿古羅。
俺は結局、何色にも染まれなかった。……猫のように気まぐれに、自由になんて生きれなかったよ。
約束守れなくて、勝手にこんな選択して本当にごめん。でももう、本当に無理なんだ。こんなクソみたいな世界で生きるの。
俺は涙を拭うと、ぬいぐるみを鞄の中に入れて、二階にある母さんの部屋に行った。
「母さん、いる?」
部屋のドアをノックして小声で尋ねると、母さんはすぐにドアを開けてくれた。
「海里? よかった? 目が覚めたのね! 道路で倒れてる海里を見た時は本当に気が気じゃなかったわ!」
傷のことを想ってか、俺をできる限り優しく抱きしめて母さんは言った。