「じゃあとりあえず自己紹介でもしながら、複数人で撮れるプリクラ探しましょう! あたし、咲坂奈緒(さきさかなお)って言います。高校一年生です」
 四人で四階の廊下を歩き始めた直後、低身長の子は笑って言った。
「……茅野美和(かやのみわ)。私も高一」
 高身長の子が咲坂につづいて、素っ気なくいう。
「俺は阿古羅零次。で、こっちは井島海里。俺らも高一だよ」
 阿古羅はウインクをして、チャラい雰囲気を作って言った。
「みんな同い年なんだ! じゃあ敬語にしなくていいよね?」
 口の前に手をやって、咲坂は嬉しそうに笑う。
「おう! 海里も問題ないよな?」
「……まぁ」
 阿古羅に確認された俺は、素っ気なく頷いた。
 俺達はその後、二分もしないうちに複数人で撮れるプリクラの機械を見つけた。

 カーテンを開けて中に入ると、そこには変わった空間は広がっていた。
 右端と左端に荷物置き場のようなとこがあって、中央にタッチパネルで操作できる大きな画面がある。画面の周りは白いライトで照らされていて、天井の近くにはカメラとスピーカが設置されている。
 床には、足のマークのシールが貼られていた。
「……こんな風になってるんだな」
「ああ。面白いだろ?」
「……うん。スマフォとかで中がどうなってるか調べたことはあったけど、それと実際に見るのじゃ全然違うし、凄く新鮮だ」
「ならよかった。海里、最初に小銭入れろよ」
 そう言って、阿古羅はスクバから財布を取り出して、俺に手渡す。

「あれ? 海里くん、お財布持ってないの?」
 言葉が詰まる。
 どうしよう。虐待をされてるから金をもらえてないなんて言いたくない。でも、何か言わないと怪しまれるよな。