「はぁー。すぐに暗くなるなよ。来いよ。面白いとこ連れてってやる」
阿古羅が俺の腕を引いて、階段の方に向かう。
「面白いとこって、どこ?」
「プリクラだよ。プリクラ!」
「……プリクラ?」
「ああ。意外と楽しいんだぜプリクラって」
「なんでそんなこと知ってんだよ」
「女友達めっちゃいるから」
とても嫌な答えが返ってきた。
どんだけチャラいんだこいつ。
「そいつらはお前のこと男友達じゃなくて、彼氏にしたい男として見てんじゃないのか」
「アハハ! それはねぇよ。俺が本命作らない主義なのあいつらも知ってるし」
阿古羅の言葉に俺は絶句する。どうりでチャラ男っていわれているわけだ。
「……本命作らないのか?」
「だってめんどくさいじゃん。何かあればすぐ嫉妬されたりとか、些細なすれ違いで喧嘩したりとかさ。そういうのも含めて恋愛の楽しみだとかいう奴も中にはいるんだろうけど、俺はそうは思えないから。それに、俺子供とか作る気ないから。長く付き合うと、そういうのって言いづらくなんじゃん?」
意外と理由がちゃんとしていた。
セフレか女友達だとそういういざこざの心配が一切ないから、そうしてるってことか。
「……何で子供作りたくないんだ?」
「先に子供が死んだらやだから」
阿古羅はか細い小さな声でいった。
お昼の時にも一度だけ見せた何処か暗くて、闇が深そうな顔をして。
「何でそんなに人が死ぬのが嫌なんだ?」
阿古羅は俺を必死で生かそうとしていた。
死にたくないって想いがあることに気づかせるために、わざわざ俺にはさみを向けた。必死で、死にたくないって想いを思い出させようとしていた。
一体どうして、阿古羅はそんなことをしたんだ?
「さぁ。なんでだろうな。そんなことはいいから、早く四階いこうぜ」
阿古羅は作り笑いをして四階に向かう。
どうやら、相当答えたくないらしい。
俺はしぶしぶ、阿古羅の後をついて行った。
「え? 阿古羅入んないのか?」
阿古羅は四階の入り口の手前で、足を止めた。
「……ちょっと待ってて」
「え? うん」
首を傾げながら、俺は頷く。
「あ」
【男性のみでのお入りはおやめください】
四階の入り口の床に書かれた文字を見て、俺はつい声を漏らした。
「……入れないじゃん」
「入れるようになるから、ちょっと待ってろ」
ニヤニヤと笑って、阿古羅は言う。
「えっ。阿古羅、それどういう意味だ?」