「そんなの気にすんなよ。 俺、独り暮らししてるから、お前が虐待のこと俺の親にいたくないっていうなら内緒で匿えるし、悪くない提案だと思うんだけど?」
「……でも」
無一文で居候するなんて、ダメだろ。
「わかった。お前が乗り気じゃないなら、もう無理には言わない」
「……ごめん、ありがとう」
「ん。……なぁ、海里、ゲーセンいかね?」
首を傾げて、阿古羅は言う。
「……行かない」
ゲームセンターなんて行ったことないから興味が湧いたけど、口に出さなかった。
「一時間以内に帰らせるから! それならいいだろ?」
阿古羅が顔の前で両手を合わせて、ウィンクをする。
「……わっ、わかった」
虐待のせいで同級生と遊んだことがなかった俺は、阿古羅の誘いに興味が湧いて、小さな声で頷いた。
俺はその後、本当に阿古羅とゲーセンに向かった。
ゲーセンは、学校から徒歩でニ十分くらいのところにあった。
ゲーセンは四階建でゲーム機がかなり多いところらしく、店内のいたるところに隙間なくゲーム機が置かれていた。
凄い光景だ。
視界が全てゲーム機で埋め尽くされている。
生まれて初めて見る光景に呆然とし、俺は息をのんだ。
「何したい?」
入り口を入ってすぐのところにあった案内板を指さして、阿古羅は首を傾げる。
ゲーセンはどうやら、一階はUFOキャッチャー、二階は音ゲーや対戦ゲーム機、三階はパチンコ、四階はプリクラと、階によってきちんと振り分けがされているようだった。
「回りたい。ゲーセン初めて来たし」
「嘘だろ? なんで?」
目を見開いて、大袈裟に阿古羅は驚く。
「……俺、十一歳の時から父さんに殴られてて、放課後は傷が痛いせいで友達と遊べなかったから」
「そっか。悪いな。言いにくいこと言わせちまって」
阿古羅は俺の言葉を聞いて、そう歯切れ悪く申し訳なさそうに言った。
「……別にいい」
俺は阿古羅から目を逸らして、小さな声で言った。