「えーとそれは、俺がおっちょこちょいだからだよ。よく怪我すんの」
 ……足のことを言っているのだろうか?
「……その足は、ドジでやったのか?」
「……そういうこと!」
 阿古羅は一瞬だけ目尻を下げて悲しそうに顔を伏せてから、笑って俺の言葉に頷いた。

 お互いの火傷したとこに包帯を巻き終えた直後、俺のお腹が、ぐーっと音を立てた。

「あ」
 思わず頬が赤く染まる。

「アハハ! もしかして海里、昼飯まだなのか? これ、ベンチで食う? もう冷めてると思うけど」
 阿古羅はそういうと、スクバの隣にあるコンビニの袋から野菜が沢山入ったグラタンとスプーンを取りだした。
「……いい。阿古羅のだろ」
「フッ。遠慮すんなよ。俺のはもう一個あるから」
 グラタンとスプーンを俺に手渡してから、阿古羅はコンビニの袋からやきそばパンを取り出す。
「ありがとう」
 俺は冷めたグラタンとスプーンを受けとると、床にあった阿古羅のブレザーを持った。
「おっ。気が利くじゃん。じゃ、ベンチに行くか」
 阿古羅が鞄とコンビニの袋を肩に掛けて、楽しそうに言う。
「……うん」
 俺は小さな声で頷いた。

「え?」

 俺はトイレを出ると、公園の様子を見て足を止めた。
 公園は遊具も木もなくて、トイレの他にはベンチが隅に一つ置かれているだけだった。
 不自然なくらいものが少ない。……こんな公園があるのか。
 さっきまで焦っていたからか、俺は今更のように公園の異様さに困惑した。
「……ここ、寂しい公園だよな」
 阿古羅が俺の隣に来ていう。
「うん。なんで遊具が一つもないんだ?」
「自殺防止のため。何年か前に、ここで人が死んだんだ。桜の木に縄をくくりつけて首をつってな。それからすぐに木は切り落とされて、遊具も撤去されたらしい」
「よく知ってるな」
「死んだ奴が親父の知り合いだから。まぁ知り合いって言っても、別に友達でも何でもなくて、仕事関係で少しだけ話したことがある程度みたいだけどな」
「そっか……」
「海里、飯食おうぜ。早く食わないと、昼休み終わっちまう」
 阿古羅が公園のベンチを顎で示して、笑う。
「うっ、うん」
 俺は小さな声で頷いて、阿古羅と一緒にベンチに向かった。