「アッ⁉ アッツ!!! とっ、父さん、なっ、なんで、こんなに傷つけんの?」
煙草の火をさらに深く押し付けられた。鎖骨の皮が次々にむけて、血を噴き出す。
熱のせいで筋肉がとけて、骨が剥き出しの状態で出てくるんじゃないかと思った。そんなことを考えてしまうくらい熱くて、苦しくて、辛い。
「お前を弱らせたいからだ」
「は、はあっ。……こんなに跡を作ったら、俺が死んだ時に虐待を疑われるよ?」
「お前が事故に巻き込まれて死ねば、疑われずに済むだろ。そうすれば損傷が激しすぎて、虐待の傷か死んだ時の傷かなんてわからなくなる」
最悪だ。言ってることが酷すぎる。
二分くらいで火が消えると、父さんはやっと煙草を押し付けるのをやめた。
「はっ、はぁっ、はぁ……」
「息をかけるな。気持ち悪い」
父さんは煙草を地面に投げ捨てると、俺の腹を勢いよく殴った。
「ぐっ!?」
口から漏れた唾液が、父さんの服にかかる。
「……汚い。お仕置きだ」
「いっ!? ああああぁぁぁぁっ!!!」
火傷した鎖骨を、爪で引っ掻かれた。どろどろと血が流れて、あまりの痛みにまた悲鳴が出た。
「……父さん、飯……抜かないでっ。……俺、お腹がすいて……いっ!」
涙を流しながら掠れ声でそう懇願すると、また鎖骨を引っ掻れた。
「腹が減ってるから抜かないで欲しいのか? もの凄い我儘だな。何様のつもりだ?」
「いった! はぁっ、はぁ……」
鎖骨を勢いよく叩かれる。
まるで玩具みたいな扱いだ。
……いや、みたいではない。
父さんは俺を玩具として扱って、叩いたり引っ掻いたりするたびにものすごい痛みと熱に襲われて声を上げる俺を見ながら、悪魔のように笑った。
それはまるで、いじめを心の底から楽しんでる子供みたいに。
俺は痛みと熱で荒ぶる心臓の鼓動を、何度も呼吸をして必死で整えた。
「はぁっ。とっ、父さん、もうやめ……うっ!!!」
〝やめて〟と言い切る前に、鎖骨を殴られる。
「ククク。痛いか?」
顔をゆがめて苦痛に耐える俺を見て、父さんは喉を鳴らして笑った。
……痛いなんてもんじゃない。そんな三文字の言葉ではとても現しきれないくらい苦痛だ。実の親にこんなことをされるのは。
本当に地獄でしかない。
「もう一回チャンスをやる。これで声を上げなかったら、飯は抜かないでやるよ」
俺の胸倉から手を離すと、父さんは足元にあるカップラーメンを拾い上げて、それの容器を密閉するために貼ってあったテープを外した。
マズい。
きっと、中身を腹か胸にぶちまけるつもりだ。