それは本当だった。
俺は零次がいなくなってから、何度も死のうとした。少なくとも一か月に一回はこいつがいない事実に絶望して、死のうと考えてた。
「ごめん、そんなに苦しめて。俺、お前がそんなに引きずると思ってなかった」
零次は俺の涙を、優しい手つきで拭った。
「引きずるよ! だって俺は、本当は死ぬハズだった。お前に助けられなければ、死ぬことになってた。……お前に出会わなければ、こんなに生きてなかった。車に轢かれて事故死に偽装されるか、実親に殺されて他殺に偽装されるかするハズだったんだ。お前はそんな俺を突然救った! 死ぬハズだった俺を生かしてくれて、俺の世界を地獄から天国に変えてくれた! お前は俺にとって、神様みたいな奴なんだよ!」
俺の言葉に驚いて、零次はますます目を見開く。
「神……様?」
「……そうだよ。ずっと生きてるのが苦しかった。毎日ガレージに閉じ込められたり、火で炙られたりして、生きてるのをずっと苦しいと思ってた。早く父親に殺されたいと思ってた。……零次はそんな俺の価値観を変えてくれた。生きたいって思っていたのを思い出させてくれた。死にたがりの俺を散々笑わせて、生きるのは楽しいことだって教えてくれた。俺はお前に出会って、世界が変わったんだよ!」
一筋の涙が、零次の頬を伝う。
「……俺も、そうだった。……大好きな母親を殺されて、車の中に閉じ込められて、生きてるのをずっと苦しいと思ってた。でも死ぬ勇気もなくて……。ただただ毎日を死んだように過ごしてた。楽しいことなんて何一つなかった。でもお前に出会って、その価値観が変わった。……お前といて、母親が死んで以来初めて、生きてるのを楽しいと思えた。幸福だと思えた。俺はお前に出会って、世界が変わったんだ」
「零次……今度はずっと一緒にいて……。もう離れないで」
俺は零次の服を力いっぱいにぎりしめて、すがるように言った。
「ああ、離れないよ。お前とずっと一緒にいるために顔も変えたんだ。だから絶対に離れない。一生そばにいるよ」
零次は笑って、俺の頭を撫でた。
(了)