「ごめんな、助けて」
「え……?」
 涙を拭いながら、俺は聞き返す。
「こんな酷い結末になるくらいだったら、出会わない方が良かったかもな俺達」
 俺は零次を砂浜に押し倒した。
「ふざけんな! そんなこと言うなよ!!」
 零次の胸を何度も何度も俺は叩いた。
 零次は笑って、俺の頭を撫でた。
「……ありがとな、そんな風に言ってくれて」
 その言葉は、俺がかつて零次に向けて言った言葉だった。
 思わず俺は言葉を失う。
 俺達は本当にここで終わりなのか?
 俺達が一緒に生きる方法は、本当に一つも残されていないのか?
 いや、違う。
 そんなことないハズだ。
 考えろ。――考えろ、二人で幸せをつかみ取る方法を。

 警察を呼んでも、零次の父親がそれより先に来たら意味ないよな。

 じゃあ誰かに助けを求めるのは? 
 母さんに電話をかけてもしょうがないよな。一体、誰にかければいいんだ?
 ――ダメだ。思いつかない。
 零次の父親から逃げる方法が、全く思いつかない。
 本当に方法は一つもないのか……?
 いや、ある。一つだけ。
「零次、服屋に行こう」
「え? ……まさか海里、変装でもする気か?」
「うん。女装して逃げる」
 俺がそう言うと、零次は鼻で笑った。
「ハッ、アホか。女装なんてしても顔でバレるに決まってるだろ」
「ああもう! うるさいな! やってみなきゃわかんないだろ! ……頼むから、少しは自分のために動いてくれよ!!」
 俺の言葉を聞いて、零次はほんの少しだけ目を大きく開けた。
「……俺、監禁をされる前に、お前に会いたかったよ。そうなってたら、自分のために動けたのかもしれないな」
 そういうと、零次は俺の肩をどんと押してから、立ち上がった。
「うわっ」
 咄嗟のことでまともに反応できなかった俺はバランスを崩して、砂浜にしりもちをついた。
 ――バシャンッ!
 俺が身体を起き上がらせた瞬間、零次が海に飛び込んだ。
「れっ、零次!!」
 俺は慌てて零次の後を追って、海に潜った。
 でも俺は怪我のせいでまともに泳ぐことも出来なくて、すぐに意識を失ってしまった。