「ふざけんな! 人が死ぬのは散々止めたくせに、そんなこと言ってんじゃねぇよ!」
そうするしかないなんて言わないで欲しかった。どうしようもない状況だからって何もかも諦めないで欲しかった。俺の人生をどうしようもない状況から必死で救ってくれたくせに、そんな風に言わないでほしかった。
俺が生きたいと思ってるのを見破って自殺を止めてくれたのは零次なのに、零次自身は自殺にためらいがないのすごい嫌だと思った。
さんざん考えて出した結論でも、それだけは嫌だと思った。
「……ごめんな、海里。でももうダメだ。ゲームオーバーだ。俺達は」
「は?なんでだよ」
「……お前が俺の場所を父親に教えたからだよ。せっかくハッキングされてるスマフォを壊してから海に行ったのに、お前が俺の居場所を父さんに教えちまった。……父さん、きっとお前を尾行してる。もうすぐ、ここに着くよ」
「なっ!?」
思わず言葉を失う。
俺は唇を噛んだ。
――何かないのか。俺ら二人とも助かる方法。
「海里、もういい。もう二人で生きようとしなくていい。全部俺の自業自得だから」
「嫌だ! 絶対嫌だ! お前がいない世界で生きるのなんて!」
零次の胸倉をさらに強い力で握りしめて、俺は叫んだ。
「駄々っ子か」
俺を馬鹿にするみたいに、零次は笑った。
「駄々もこねたくなるよ! だって俺、お前がいなかったら……死んで……っ」
力が抜けて、零次の胸から手が滑り落ちる。
零次は俺の頬に手をやって、涙を拭った。