――何をされるのか、察しがついた。
路地裏とか人気がないとこに連れてかれて、カップラーメンの中身を地べたに投げ捨てられて、それを食うように促されるんだ。
……嫌だ。そんな屈辱味わいたくない。
ズボンのポケットに入れていたスマフォが、突然音を立てる。
《早く入れ》
スマフォを起動すると、父さんからラインがきていた。
……気づいているのか。
《入んないと、今日の昼飯と夜飯を抜く》
……飯を抜かれたら、餓死で死ねるかな。
アホか。死ねねぇよ。死ねるわけがない。
二食抜かれるだけで死ねるなら、俺はきっととっくに死んでいる。
《今から一分以内に入んないと、本当に抜くぞ。今日の夜と明日の朝だけじゃない。明日の朝昼晩も抜くぞ》
そんなに抜かれたら、水も取らないようにすれば、明後日までに餓死で死ねるんじゃないか?
――試してみるか?
餓死なら、飛び降りとかをするよりよっぽど楽に死ねそうだし。
俺はいつの間にか、ベランダに締め出されたせいで重い体をひきずって、コンビニの中に入っていた。
餓死するかどうかを試したいと思っていたハズなのに、そうしていた。
――なにしてんだよ、おい。
何で想っていることと逆に身体が動くんだ。意味が分からない。
「……三分四十秒。遅いな。走れば三分もかからないで着いただろ」
イートインのところに椅子に座っている父さんが俺に気づいて、手に持っていたスマフォのストップウォッチを止めて、画面を俺に見せる。
ストップウォッチは、確かに三分四十秒で停まっていた。
……遅いね。
俺をガレージに閉じ込めて、熱中症になる寸前まで身体を弱らせた奴がよくいう。
「……飯は?」
父さんが座っている椅子の前の机に置かれたカップラーメンを見ながら、俺は言った。
「ああ、そうだな。飯抜きはなしにしてやる。そんでこれも、後で食べさせてやるよ。ただし、今からやられることを全部悲鳴を上げないで耐えられたらな」
父さんは立ち上がると、カップラーメンを右手で持ち、左手ででやせぎすの俺の腕を力を込めて握った。
握られたそこは、昨日皮をむかれたのと同じとこだった。
「いたっ!」
痛みが押し寄せてきて、俺は思わず声を上げた。
振りほどきたいのに、腕が痛くて振りほどけない。
「コンビニを出るまでは声も上げるな。もしまた声を上げたら、腕をへし折るぞ」
父さんが俺の足を踏んで、耳元で囁く。
俺は口をぎゅっと結んで、声を出すのをこらえた。