ずぶ濡れのまま家に戻ったら、心配したお義母さまと家の者たちが飛び出してきた。

「まぁ、志乃さん、一体どこまで行ってたのよ!」

手ぬぐいを受け取る。

体を拭きながら、その人が代わりに答えた。

「少し寄り道をしていたら、すっかり遅くなってしまったのです」

お義母さまはそれでもまだブツブツと言っていたけれど、とにかく濡れた体をどうにかする方が先だ。

抱えていた風呂敷を差し出す。

「お土産です」

ぐっしょりと濡れたそれを受け取った義母は、盛大なため息をついた。

「ま、別にいいんですけどね。二人とも無事に帰ってさえ来てくれれば……」

義母は風呂敷を広げた。

「お義母さまとお祖母さまと、私にも同じ化粧用の油紙を。お父さまと晋太郎さんには、根付を買って参りました」

家の者にと買ってきた飴玉は、濡れて台無しになってはいないかしら。

「志乃さんは、今日はこのために出かけていたのですか?」

義母にそう言われ、言葉に詰まる。

晋太郎さんが不機嫌に声を荒げた。

「先に着替えさせてください。風邪を引きます!」

風呂を沸かすかと聞かれたが、もう遅いので断る。

湯に浸した手ぬぐいで体を拭き、湯たんぽを出してもらった。

簡単な食事を済ませてから、早々に床につく。

お義母さまの指示で用意された寝所に、もう衝立はなかった。

「寒くはないですか?」

「大丈夫です」

このまま寝ろと言われても、全然落ち着かない。

晋太郎さんも落ち着かないのか、かけ布団をめくっただけで手をとめた。

ついさっきまでの出来事がまだ頭の中にこびりついていて、何よりもすぐ横にこの人がいるということが一番の問題なのだ。

もぞもぞとしていたら、その人は口を開いた。