「私も早く、赤さんがほしいです」
「分かりました。それを聞いて、私も安堵いたしました」
お義母さまはそう言って、凄い勢いで食事を再開する。
晋太郎さんは、今度はご飯で咳き込んでいた。
夜になって、いつものように敷いた布団と布団の間に衝立を立てる。
足のついた大きな一枚板の衝立は、床から少し浮いていて、布団に横になれば、その向こうの様子が少しは見ることが出来る。
先に横になっていると、ちょっと遅れてその人は入ってきた。
「明日は、お義母さまと市に行く予定なのです」
「そうですか」
唐草渦巻きの向こうで、晋太郎さんも床に入った。
「何か欲しいものはありませんか? 明日はお勤めなのでしょう?」
「……。そうですね、では、アンコウがあればお願いします。鮭もいいですね。コイやサワラも好きです」
「あ、私もサワラの味噌焼きは好きなのです。では、あればサワラを買ってきます」
「お願いします」
「はい!」
ごそごそという衣ずれがして、晋太郎さんは衝立の向こうで背を向けた。
「あ、あの……、晋太郎さんも、子供が欲しいと思おいですか?」
「……。それが勤めだとは、思うております」
「ならよかった」
ほっとして、ため息をついた。
「子は授かり物と申します。早くそうなればよいですね」
私も寝返りを打つ。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
明日は十日市だ。
久しぶりの遠出になるし、しっかり寝ておこう。
私はすぐ手の届く隣で寝ている人に思いを馳せる。
そうか、アンコウか。また一つ、この人のことを知れた。
よく実家で食べていたサワラは、どこで買っていたのだろう。
あれを一度、晋太郎さんにも食べさせてあげたいな。
そうだ。今度家に頼んで同じものを取り寄せてもらおう……。
そんなことをあれこれと考えているうちに、いつの間にか眠っていた。
「分かりました。それを聞いて、私も安堵いたしました」
お義母さまはそう言って、凄い勢いで食事を再開する。
晋太郎さんは、今度はご飯で咳き込んでいた。
夜になって、いつものように敷いた布団と布団の間に衝立を立てる。
足のついた大きな一枚板の衝立は、床から少し浮いていて、布団に横になれば、その向こうの様子が少しは見ることが出来る。
先に横になっていると、ちょっと遅れてその人は入ってきた。
「明日は、お義母さまと市に行く予定なのです」
「そうですか」
唐草渦巻きの向こうで、晋太郎さんも床に入った。
「何か欲しいものはありませんか? 明日はお勤めなのでしょう?」
「……。そうですね、では、アンコウがあればお願いします。鮭もいいですね。コイやサワラも好きです」
「あ、私もサワラの味噌焼きは好きなのです。では、あればサワラを買ってきます」
「お願いします」
「はい!」
ごそごそという衣ずれがして、晋太郎さんは衝立の向こうで背を向けた。
「あ、あの……、晋太郎さんも、子供が欲しいと思おいですか?」
「……。それが勤めだとは、思うております」
「ならよかった」
ほっとして、ため息をついた。
「子は授かり物と申します。早くそうなればよいですね」
私も寝返りを打つ。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
明日は十日市だ。
久しぶりの遠出になるし、しっかり寝ておこう。
私はすぐ手の届く隣で寝ている人に思いを馳せる。
そうか、アンコウか。また一つ、この人のことを知れた。
よく実家で食べていたサワラは、どこで買っていたのだろう。
あれを一度、晋太郎さんにも食べさせてあげたいな。
そうだ。今度家に頼んで同じものを取り寄せてもらおう……。
そんなことをあれこれと考えているうちに、いつの間にか眠っていた。