「あ、 ありがとうございます!」

 イライザさんはいつもこんなふうに気遣ってくれる。わたしにとっての天使……いや、女神と言っても過言ではない。
 その言葉に甘えて、自室へと足を向けようとしたが、先ほどのレオンさんの事が思い浮かんだ。

 あの人だって疲れていたはずなのに雪搔きという自分の職務を全うしている。それなのに私が休んでいてもいいのだろうか。
 そう思い直して、休みたい心を抑え込む。

「お気遣いは嬉しいですけど大丈夫です。私、スプーンとか食器とか磨きますね。それに、開店前にも扉の前に雪が積もってないかチェックしないといけないし」
「あら、そう? それじゃあお願いしようかしら。ところでユキちゃん。髪の毛が乱れてるわよ。外は風が強かったの?」

 言いながら、イライザさんは私の髪を手で梳いて整えてくれた。
 イライザさん優しいなあ。この世界での癒しだ。
 しかし何故かイライザさんはそのまま私の耳周辺を撫で始める。

 なんだろう。撫でられるのは気持ちいいけど、耳に何かゴミでもついてるのかな。
 と思ったが、イライザさんの手は止まらない。その上何故か顔も少し上気しているような気がする。

「あの、イライザさん……?」

 おそるおそる声をかけると、イライザさんははっとしたように手を離した。

「あら、ごめんなさいね。ユキちゃんの耳の手触りがちょっと気になって……あ、もちろん悪い意味じゃないわよ。ユキちゃんはそのままが一番なんだから」

 もしやイライザさんて獣耳とか毛玉系が好きなのかな……私のしっぽも狙ってたりして……
 私は無意識のうちにお尻を守るようにスカートの後ろを抑えていた。