思い返せば2ヶ月ほど前――

 この世界に来たばかりで仕事にも慣れない役立たずの私は、助けてもらった恩に報いるために、自分に何かできる事はないかと焦っていた。
 そんな時、雪の積もった朝に行われるという雪掻きの話を聞いて立候補したのだ。

「私の故郷も雪国だったんです。だから雪掻きなら任せてください! 雪掻きプリンセスと呼ばれた私の雪掻きテクニックをお見せしますよ。くくく」

 だなんて自信満々に宣言して。
 しかし、実際の雪掻きは私の想定していたものとは違っていた。
 現場で私に渡されたのはシャベル一本。それも金属製の重いやつだ。

「あの、これだけですか? スノーダンプとかは……?」

 スノーダンプとは、言うなれば大きなちりとりのようなものに長い持ち手の付いた除雪用の道具である。一度に大量の雪を積載しながらもスムーズに移動できる優れものだ。
 しかし、その時一緒に除雪作業を担当していたレオンさんは、私の問いに怪訝な顔をした。

「は? すのーだんぷ? なんだそりゃ」

 私がスノーダンプについて簡単に説明すると、レオンさんは訝しげな顔のまま眉をひそめた。

「お前の故郷はどうだったか知らねえけど、そんなもんこの国にはねえよ。わけのわからねえ事言ってねえでさっさと手を動かせ。手を」

 その言葉に絶望した。スノーダンプが無ければ、今や体も縮んだかよわい乙女である私の機動力なんて、小学校高学年男子並みかもしれない。私の雪掻きテクニックはスノーダンプあってこそなのだ。
 しかし、自分から志願した手前、今更できませんなどとは言えない。

 重いシャベルで四苦八苦する私の背後から

「どこが雪掻きプリンセスなんだよ。プリンセスどころか庶民以下だろ」

 というレオンさんの呟きが聞こえた。

「いやー、残念ながらシャベルじゃ真の力が発揮できないんですよ。スノーダンプさえあれば私の華麗な雪掻きテクニックが披露できたんですけどねー。ほんと残念だなー」
「お、今度は負け惜しみプリンセスか? 見栄はらずにさっさと謝ったほうがいいんじゃねえの? 大口叩いてすみませんってな」

 くっ……この人性格悪いな。
 しかし私が大見得切った挙句にまったくの役立たずだったというのは事実である。
 しぶしぶ

「……すみません。お役に立てなくて」

 謝る私に対して、レオンさんは不機嫌になるような事はなかったが、何故か勝ち誇ったように、にやにやしていた。
 く、くやしい……